はじめにBeyond 5G / 6Gと呼ばれる次世代の情報ネットワークでは、センサー、クルマ、ロボット等のモノ、ネットワークの末端(エッジ)やネットワーク内に配置されたサーバ等のコンピューティング資源を活用して超低遅延・高効率なICTサービスを実行可能とする「エッジコンピューティング技術」が重要な役割を担う。NICTが発表したBeyond 5G / 6G White Paper [1]においても、エッジコンピューティング技術によって超多数のモノ・デバイス・コンピュータが自律的・自動的に動作して実現される将来のネットワークサービス像が示されている。総合テストベッド研究開発推進センターでは、こうした将来のエッジコンピューティング技術の確立・社会展開を目指した研究開発及びテストベッド構築を進めている。本稿では当センターにおけるエッジコンピューティングへの取組状況について述べる。エッジコンピューティングにおける遅延保証 エッジコンピューティングにおいて、ネットワーク内のコンピューティング資源を有効に活用し、低応答遅延のICTサービスを実現するためには、エッジサーバーやデバイス間の通信遅延、データ処理遅延等を計測し、処理の実行位置や構成を調整する必要があり、システムの複雑化やオーバヘッドが課題となる。我々は、こうした課題をインフラレベルで解決する方法として、コンピューティング資源の配置とネットワーク構成を抽象的に表現する「仮想リージョン」と呼ばれるモデルに基づき通信遅延を保証するインフラ構成方式を提案してきた[2]。仮想リージョンは、ネットワークの通信遅延やコンピューティング資源の利用状況に基づいて決定される無線基地局のグループである。上位ICTサービスは、ネットワーク内コンピューティング資源間の通信遅延等を個別に計測せずとも、仮想リージョンを指定することで、要求遅延やコンピューティング資源数等の条件が保証されたエッジコンピューティングインフラを利用できる。提案方式では、複数のICTサービスからの要求を束ね、条件を満たしつつ消費電力が小さくなるよう物理的なサーバ資源等を仮想化して複数サービス間で共有するなどの最適化を図る。エッジコンピューティングにおけるデータアクセス制御 エッジコンピューティングの利点の一つに、センサー等から得られるデータを利活用する際のセキュリティリスクの低減がある。例えば、工場内の機器のセンサーデータをエッジサーバー上で加工し、結果のみを送信することで、工場外のネットワークへセンサーデータを出さずに機器の稼働状況を収集・活用するICTサービスを実現できる。こうしたセンサーデータの活用を行う場合、データの加工を伴うアクセス制御をネットワーク設定と連動して行う必要があり、複数のICTサービスが共存する環境や、頻繁に設定変更が必要なアプリケーションにおける管理コストが課題となる。また、エッジコンピューティング環境では、処123総合テストベッド研究開発推進センターではBeyond 5G / 6Gを支える将来のエッジコンピューティング技術の社会展開を目指した研究開発及びテストベッド構築を行ってきた。本稿では当センターにおけるエッジコンピューティングへの取組状況について述べる。NICT ICT Testbed Research and Development Promotion Center has been researching, devel-oping, and constructing testbeds. One of its aim is social implementation of edge computing to support Beyond 5G / 6G. This paper describes our activities on the edge computing in the center.4-1-3 エッジコンピューティングへの取組4-1-3Activities on Edge Computing寺西裕一 山中広明 木全 崇 高木雅裕 河合栄治 永野秀尚TERANISHI Yuuichi, YAMANAKA Hiroaki, KIMATA Takashi, TAKAGI Masahiro, KAWAI Eiji, and NAGANO Hidehisa514 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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