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理能力が低いデバイス等が混在するため、データレベルのアクセス制御を実行する際のオーバヘッドが大きくなってしまう課題も生じる。我々は、こうした課題を解決するため、エッジコンピューティング環境におけるデータのアクセス制御を、仮想ネットワークとコンテナ仮想化ソフトウェアの接続関係の制御により行うシステム構成方式の検討・実装を進めている。ネットワークレベルで制御を行うことにより、処理能力が低いデバイス等でデータレベルのアクセス制御を行う必要がなくなり、オーバヘッドの低減・性能の向上が可能となる。エッジコンピューティングテストベッドの構築               総合テストベッド研究開発推進センターでは上記技術を適用したエッジコンピューティングテストベッドの設計・構築を進めている。本テストベッドは、大きく分けるとエミュレーション環境テストベッドと実環境テストベッドの二つから成る。エミュレーション環境テストベッドは、StarBEDを用いてエミュレーションにより再現された広域ネットワークにコンピューティング資源を接続し、エッジクラウド(ネットワーク内コンピューティング資源)、無線基地局、クライアント(デバイス・センサーなど)が複数配置された環境を再現する[3]。実環境テストベッドは、インターネット・イントラネットに接続されたセンサーやデータをデータ利用ポリシーに従って活用するコンテナ仮想化ソフトウェア・仮想ネットワークから成るエッジコンピューティング環境を構成する。上記のうち、エミュレーション環境テストベッドは2021年7月より初期サービスの提供を開始しており、順次機能拡張等を進めていく予定である。コネクテッドカーからのデータ収集Beyond 5G / 6Gでは、高速移動するコネクテッドカー、ドローン、自律走行ロボット等の移動体もエッジコンピューティングの構成要素となる。5G / 6G等のモバイル通信網を用いる場合、移動体が基地局の通信可能エリア外を移動する際、ICTサービスの提供やデータ収集をいかに継続するかが課題となる。こうした課題に対処する方策として、基地局を経由せず車両同士が直接通信する車車間通信によるコネクテッドカー実現方式の標準化や研究開発が進んでいる。しかし、従来の車車間通信方式は、大容量の車載カメラ映像や車両センサーデータを多数扱うコネクテッドカーに適用する上では、冗長なデータが通信帯域やバッファを占有してしまう等の要因により、頻繁にデータ収集の失敗が発生してしまうという問題があった。我々はコネクテッドカーからのデータ収集を対象とし、車車間通信をデータ送受信に、モバイル通信を車車間通信の制御にそれぞれ活用する「Hybrid DTN」アーキテクチャ及びデータ収集方式を提案した[4][5]。提案方式では、車両がモバイル通信可能な状態にあるときは、コントローラから受信した制御情報に基づいて冗長なデータを廃棄しながら車車間通信を行う。また、受信した制御情報は保存しておき、車両がモバイル通信不可能な状態にあるときは、保存された制御情報をもとに自律的に同様の車車間通信を継続する。この動作により、通信可能エリアが限定された状況で45クライアント無線基地局エッジクラウドエミュレーション環境テストベッド仮想リージョン仮想リージョン実環境テストベッドイントラネット物理ネットワークセンサー・デバイスLANエッジクラウド仮想ネットワーク仮想ネットワーク仮想リージョンデータ加⼯処理インターネットコンテナ仮想化ソフトウェア図1 エッジコンピューティングテストベッド52   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発

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