まえがきテストベッド研究開発運用室では2002年から、北陸StarBED技術センターに設置されている大規模エミュレーション基盤StarBED [1]を用いた研究開発とその運用を行ってきた。平成28年度から開始した第4期中長期計画ではStarBED4(スターベッド・フォース)プロジェクトとし、これまで主にICT技術の検証基盤として開発を進めてきたStarBEDの機能を拡張し、IoT技術の検証を可能とするための研究開発を実施した。インターネットや企業内ネットワークで利用されているハードウェア・ソフトウェアをそのまま動作させるエミュレーション技術を使った検証は、環境構築のコストが大きいため、大規模な実験を行うことが一般的に難しい。StarBEDの特徴は、このエミュレーション技術を用いて、大規模な検証環境を構築し、精緻な実験を実施できることである。StarBED4プロジェクトでの達成を目指すIoT技術の検証基盤でも、この特徴を活いかした環境の提供を目指し研究開発を行った。IoT検証基盤としてStarBEDを飛躍させるためには、移動体やセンサといったIoTデバイスとその上で動作するソフトウェア、無線環境、温度場や湿度場といった物理場、人や車などの移動体の動きなどをStarBEDの上に再現する必要がある。エミュレーション基盤として、多種多様なIoTデバイスや移動体のハードウェアそのものをStarBEDの一部として用意することも選択肢の一つとして考えられたが、汎用テストベッドとしての柔軟性が失われ、様々な運用負荷が増大するといった懸念があるため、機材としてはこれまで通りの一般的なPCを用意し、その上に様々な技術を用いて、IoT技術が必要とする環境を構築することとした。ICT技術についてはエミュレーション技術を使って環境を構築し、IoTデバイスの導入については仮想マシンを活用、物理場の変化と移動体や人の挙動部分については数式等でのモデル化を前提とする1我々は2002年からICT技術の検証を行うための大規模エミュレーション環境StarBEDの研究開発とその運用を行ってきた。StarBEDはもともと、実環境用の機材(一般的なPCやネットワーク機器)とその上で動作するソフトウェアそのものを動作させるエミュレーションに着目したテストベッドであるが、無線技術や物理環境と密接な関係を持つInternet of Things(IoT)の検証を可能とするための拡張を行った。有線環境にシミュレータで計算したパラメータを適用することで無線環境を模倣するNETorium、物理的な要素の移動や障害物の位置をシミュレーションで計算し、エミュレーションと連携させることでより柔軟な検証を実現したSmithsonianなど我々が開発した技術により本環境構築が可能となっている。本稿ではこれらの取組について述べる。Since 2002, we have been researching and developing StarBED, a large-scale emulation envi-ronment (testbed) for evaluating ICT technology, and operating it. Originally, StarBED focuses on emulation that operates equipment for the real environment (general PCs and network equipment) and the software itself that runs on them. We expanded the testbed to enable evaluation of the In-ternet of Things (IoT) that has a close relationship with wireless technology and behavior of physical environment. This environment is realized by the technology we have developed.NETorium is a technology that imitates a wireless environment by applying parameters calcu-lated by a simulator to a wired environment and Smithsonian has realized evaluation that incorpo-rates emulation and simulated movements of physical elements and obstacles. This paper describes these efforts.4-2 IoT技術の検証を可能とするテストベッドの研究開発4-2Research and Development of Testbed that Enables Evaluation of IoT Technologies明石邦夫 井上朋哉 榎本真俊 宮地利幸 三輪信介 湯村 翼AKASHI Kunio, INOUE Tomoya, ENOMOTO Masatoshi, MIYACHI Toshiyuki, MIWA Shinsuke, and YUMURA Tsubasa554 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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