シミュレーション技術を用いて再現し、エミュレーション環境とリアルタイムで接合することで、人・地形・天候などをも取り込んだ実証環境の構築を実現した。本稿ではこれを実現するための個別の技術について述べる。IoTテストベッドとしてのStarBED前述のとおりStarBEDをIoTテストベッドとして提供するためにいくつかの技術を開発した。IoTテストベッドとしてのStarBEDの概略を図1に示す。前述のとおりStarBEDには基本的には一般的なPCを用意し、その上で汎用的なオペレーションシステム(OS)やアプリケーションを動作させることで検証を行う。また、近年では、物理的なPC上にソフトウェア的に仮想PC(仮想機械、Virtual Machine:VM)を動作させることで別のOSや、設定が異なる同種のOSを動作させることが可能である。我々はこの技術を採用し、多数の要素が動作する環境の構築や、異なるCPU上で動作するソフトウェア群を本環境に導入した。無線技術は近年標準的に使われてきており、無線接続を前提としたハードウェアとその上で動作するソフトウェアの数も当然増加してきており、ハードウェア及びソフトウェアの検証も重要になっている。StarBEDには有線で接続された環境のみが用意されており、無線接続そのものを提供することはできない。このような環境上でも無線接続を前提としたアプリケーションの検証を可能とするため、有線リンクを無線リンクに見せかけるNETorium [2] 及びBluMoon [3] の開発を進めてきた。また、人の動きや浸水等による移動可能範囲の変化は従来のStarBEDが対象としているICT技術の範囲外の事象であり、その予測などには一般的に数値計算等のシミュレーションが用いられている。我々の環境でも、ICT技術そのもの以外のオブジェクトの動作については、シミュレータ等をStarBED上の汎用PCの上で動作させ、連携させるシステムSmithsonianを構築した。本節ではこれらのシステムについて述べる。2.1IoTデバイスエミュレータStarBEDでは、IoT技術の検証もできるだけ実環境と同一の実装を動作させる方針をとっている。しかしIoTデバイスに関しては多種多様な物が存在し、これまで対象としてきたICTシステムよりもはるかに巨大なシステムの構築が必要となり、物理的な管理コストはこれまでに比べ増大することが予想される。そこで我々はIoTデバイスに関しては仮想機械を用い、ソフトウェアレベルでは実環境と同様のものを扱うが、ハードウェア部分に関してはエミュレーション技術を採用することとした。複数のデバイスの仮想機械を用2図1 IoTテストベッドとしてのStarBED概略StarBEDのPC群そのままPCを利用利用者の持ち込み機器PC上でセンサなどを摸倣シミュレータで物理現象などを摸倣全体として利用者の要求を満たすリアルな検証環境を連携StarBEDの多数のPCと外部接続設備で実験環境を構築するための資源を提供PCをそのまま利用できない場合は、PC上にセンサデバイスなどを摸倣もしくは外部のシミュレータと連携して必要な要素をテストベッド上に実現実現した要素群を適切に組み合わせ「リアルな」検証環境を構築。実環境では再現不可能な要素も導入。利用者の実験シナリオを実行し、観測・解析。外部接続JGN/WIDEネットワーク環境の摸倣利用者に対して環境構築、制御を制御する仕組みを提供遠隔地からの利用も可能に56 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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