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意することで、規模や割合を柔軟に変更することができ、更に管理コストを削減することが可能となった。我々は、広く普及しているスマートフォンについて、フィールドレベルの検証を可能とするために、Android端末へのセンサやUIへの入力の模擬とそれに伴うアプリやAndroid OSと各種のセンサの振る舞いを含めた、Android端末の挙動の模倣を行う既存のAndroidエミュレータを、多数動作させ、センサやUIへの入力や出力を自由に取り出すことができるフレームワークとしてGigandroid [4] の開発を行い、1,000台規模のAndroidが動作する検証環境の構築を可能とした。またIoT技術に利用されることが多いマイクロコントローラのエミュレータを開発した。ARMプロセッサを搭載したAtmel SAMD21(ARM Cortex M0+)及びNXP KinetisK64 120 MHz(ARM Cortex M4)の2種類をリファレンスモデルとして選定して新規開発し、それぞれで動作するソフトウェアをStarBED上の検証環境に導入することを可能とした。本エミュレータのデプロイには煩雑な作業が必要となるため、Docker コンテナを活用し、本作業を簡略化するための機構の開発も実施した [5][6]。2.2無線リンクエミュレータNETorium及びBluMoonStarBEDは有線ネットワークにより構築されたテストベッドであるが、無線環境を前提にしたアプリケーション等の検証を行うため有線環境上で無線環境を検証するための技術としてNEToriumの開発を進めてきた。NEToriumは、Linuxに含まれているmac80211_hwsimの機能を利用し、有線ネットワーク上のLinuxワイヤレスプロトコルスタックによって処理されたフレームをカプセル化した上で外部へ送信し、他のPCとの通信を可能とするため一台のPCに閉じず環境の大規模が可能である。NEToriumは、無線端末間の接続品質を統計的な値として適用するMeteorとフレームの同時受信時の衝突などを模倣するAsteroidの二つの要素で構成されており、Meteorが利用するパラメータについては外部のシミュレータにより計算されることを前提としている。また、Meteorはレイヤー3ネットワークプロトコルから完全に独立しているため、従来のエミュレータとは異なり、IPv4とIPv6双方に対応が可能である。IEEE 802.11ファミリに対してBluetoothに対応した無線リンクエミュレータとしてBluMoonの開発も進めてきた。BluMoonもNEToriumと同様にLinux上で動作し、Bluetoothが設計上、Host-Controller Interface (HCI)を通じて接続されるため、Controller部分をエミュレーション用に実装し、送受信側でカプセリングされたパケットをやりとりすることでBluetoothの通信を再現している。NEToriumと同様にLinux向けの一般的なアプリケーションからはLinux Kernelが提供するネットワークインタフェイスより先での処理を行っているため、実環境用の実装を動作させることが可能である。図2に無線エミュレーションの概要を示す。2.3シミュレータ・エミュレータ連携基盤 Smithsonian人流や災害時の地形等の変化のシミュレーションについては、東日本大震災以降、様々な組織が様々な手法を用いて研究開発を進めている。StarBEDにおけるIoTテストベッドにも人流等の特性を取り入れることで、より具体的かつ実用性の高い検証を実施できるが、新たにシミュレータやそのモデルを構築するコストは低くない。そこで、既存のシミュレータとStarBED上図2 無線エミュレーション概要模倣対象環境無線エミュレーション環境StarBEDノード群574-2 IoT技術の検証を可能とするテストベッドの研究開発

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