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はランダムウォーク)と、IP電話での通話のタイミングを模倣している。StarBED上にはIP電話を動作させる一連のソフトウェア群を用いた環境が構築されており、シミュレータが決めたタイミングと通話相手に対してダミートラフィックを生成する。このとき、StarBED上のエミュレーション環境上で何らかの障害やネットワーク負荷が高かった場合にはコネクションが成立せず、その結果がシミュレータに返され、シミュレータ上の「人」はプログラムされた内容で挙動を変化させる。このようにシミュレータとエミュレータ相互に影響を及ぼすことでそれぞれを連携させた実験の実施を可能とした。なお、この様子はUnityを利用して可視化した。ただし、StarBED上に構築されたネットワーク構成などの表示は省略し、通信している人同士が直接接続されるような表示としている(図7)。3.3Smithsonianを活用した減災オープンプラットフォームARIAの開発前述のシミュレーションとエミュレーションの連携基盤Smithsonianを活用し、減災オープンプラットフォームARIA [9]を大学と協調して開発した。水害時の避難シミュレーションをユースケースとし、GISデータ、物理モデルによる浸水解析(シミュレーション)、人の移動に関するマルチエージェントシミュレーション、人が持つスマートデバイス及び避難経路検索サーバ(エミュレーション)を連携させ、単一のシミュレーションとして相互の影響を確認できるユースケースを実装した。シミュレータの様々なパラメータを変更しながら、実環境用のハードウェア及びソフトウェア実装の検証が可能となり、また、本プラットフォームにIoTセンサなどからの実データをリアルタイム入力することで、災害発生時に近未来の被害状況を予測し、避難警報などの発令に活用するための検討を行っている。図8にARIAのデモンストレーション環境を示す。水害による被災地の地図情報から3Dプリンタで地形を印刷し、その上にプロジェクションマッピングすることで実験の進行状況として人の移動などを表示している。この上に2次元バーコードを置くことにより、浸水地点や停電が起こった場所などをインタラクティブに挿入することができる。あとがき我々は第4期中長期計画中に本稿で紹介した技術をはじめ様々な「実験」の高度化に関する研究開発を推し進め、高精度な実験を可能とするだけでなく、その対象範囲を拡大してきた。現在第5期中長期計画が開始されているが、第4期中長期計画での成果を活用して、さらに検証の適用範囲を拡大するための研究開発を行っ4図7 Jonathan構成図図8 ARIAデモンストレーション環境artisocMulti-AgentSimulatorStarBED人の挙動を模倣ICT環境を模倣連連携携可可視視化化60   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発

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