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理、データ通信、並列分散処理、可視化処理など様々な機能のAPIも有効である。筆者らは、これまでにNICTサイエンスクラウドにおいて図11に示す様々な機能のエコシステムをライブラリやアプリケーションとして開発し、それらの多くをOSSやフリーウェアとして提供している。時空間データGISプラットフォームに求められる機能として、国内外の様々な研究者やシステム利用者が遠隔地から情報を共有できる大規模ボリュームコミュニケ―ション機能が挙げられる。2020年から2021年にかけてのコロナ禍により遠隔会議システムが日常的となったが、一方でデータやアプリケーションの遠隔共有は十分には進んでいない。3.7で述べるChOWDERは大規模可視化ライブラリであるが、これによる遠隔可視化共有機能を有しており、これを時空間データGISプラットフォームに取り込むことで実現可能である。筆者らはNICTサイエンスクラウドでの経験から、これらの機能提供により、研究者やデータ利用者による独自アプリケーションや独自システム開発を推進するためには、データやライブラリ、アプリケーション提供だけでは不十分であると考えている。これらを利用した汎用性と訴求性の高い実アプリケーション開発によるプロモーション活動が不可避である。時空間データGISプラットフォームを活用したアプリケーションやシステムの多くが要素技術の複雑な組み合わせによるマッシュアップによることを考えると、個別の要素技術の訴求は単体では容易ではなく、システム体験が最も効率的で効果的であると考える。4で述べるひまわりリアルタイムや千曲あんずプロジェクトは時空間データGISプラットフォーム技術を具現化した事例であり、現在もこれらのアプリケーションを通じてNICTサイエンスクラウドの要素技術を利用する事例には枚挙にいとまがない。時空間データGISプラットフォームが目指すべき目標の一つが異種データ連携である。筆者らも、RSS(RDF Site Summary)によるメタデータ記述の拡張によるセマンティックWeb構築を、宇宙環境データメタデータベース[66][67]や生物バンクデータなどで構築する試みを進めてきた[68]–[70]。図13はNICTサイエンスクラウドを基盤とした学際的科学データ表示Webの処理フローである[71]。データ連携による意味情報の解釈・処理目指したが、RDFDB(RDF database)を用いてもデータ処理の高速化は難しく、また未知のデータ解釈や推論には至らなかった。4.1で述べるひまわりリアルタイムの拡張である地域版ひまわりリアルタイム(図43で後述)においては、基盤となる地理情報に各種気象データやエネルギー需要情報[72]、災害記録などの異分野データを別レイヤとして同一時空間でオーバーレイ可視化している(図14)。時空間データGISプラットフォームでは、アプリケーション利用者が独自の視点や目的で必要とする異分野データ連携可視化により情報抽出を行い、独自にデータの相関分析を行う環境の提供を目標とする。科学クラウドエコシステムクラウドを科学分野のビッグデータ処理において活用するNICTサイエンスクラウド及びその発展形である時空間データGISプラットフォームを設計・構築するにあたり重要なのは、エコシステムとして機能する要素技術である。本節では、これまでに構築し、有効性を検証してきた要素技術について議論する。3.1スケーラブル時空間同期連動技術(STARS)国際科学会議(ICSU)の下でWDC(世界科学データセンター)とFAGS(天文地球物理恒久事業連盟)がWDS(世界科学データシステム)として融合し、様々な科学分野でビッグデータ化が進み、情報処理・情報通信技術は高度化している。しかし、WDSの理念の一つである異分野学際的科学研究推進は目覚ましい発展を遂げたとは言い難い。3図14 東京都下の町丁目別の電力需要マップ[92]図13NICTサイエンスクラウドを基盤とした学際的科学データ表示Webの処理フロー72   情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発

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