はない。したがって、目標値を達成できていない理由は上記のNICTサイエンスクラウドFWの帯域変動によるものと考えられる。なお、図22と同じ京都大学とNICT間でのiperf(TCP)による測定結果が340 Mbps程度であったことを考えると、HpFPの目標スループットを400 Mbps以上に設定することで、HpFPはTCP系のデータ伝送ツールと同等以上の高い実用性能が期待できる。前述のとおり、図22の実験では両研究機関間でのパケットロスがなく、遅延もそれほど大きくなかった。図21でもわかるとおり、低遅延・パケットロス環境では両者のスループットには大きな違いはない。しかし、実験を行う時間帯においては、両機関間でのネットワーク輻ふくそう輳によるパケットロスなど発生することもあり得る。この場合には、HpFPの優位性が発揮されると予想される。筆者らはこれまで、様々なネットワーク環境においてHpFPの性能検証を行ってきた。例えばGoogle QUICに先んじてHpFPによるWebアプリケーションの高速化を実現した[83]。WIND衛星、インテルサット衛星などの静止軌道上の通信衛星(RTTは約500 ms)を対象とした通信実験を行い、気象環境に依存しない高速データ通信に成功する[84]–[86]だけではなく、パケットロスやビットエラーの計測ツールとしての有効性も示した[82]。3次元気象レーダーデータのデータ転送ツールとしても有効性を検証済みである図21 HpFPとiperfの比較結果(室内実験)図22HpFPによる京都大学学術情報メディアセンターと情報通信研究機構サイエンスクラウドシステムの間で基礎的な通信実験結果:同じ環境でiperf(TCP)では340Mbps程度であった。76 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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