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都市劣化診断などでの利活用が期待される。 3.4で述べた映像IoTでは、多数のカメラ設置目的のため映像伝送のために安価な民生PTZカメラ利用が重要である。村上らは図28に示すように安価なPTZカメラ操作において画像上で30ピクセル程度のずれが発生することを確認し[99]、さらに図29のとおりAKAZE特徴量による補正手法を確立済みである[100]。さらにこの技法を基にPTZ操作により得られる12枚のfull HD解像度画像からの高解像画像を生成するスティッチング手法を構築した(図30)。これらのアプリケーションも、2.4.2のOSSサイトにおいて一般公開予定である。屋外高所設置の鳥の目カメラ(4.2.2で後述)では強風によるカメラ揺れに伴う時系列画像のブレが不可避である。さらに長期変動検出(例えば1日以上)では太陽の位置や日々の気象状況により同じPTZ値でも画像の彩度・明度が異なり、霧雨等により不鮮明画像となる場合もある。これらの条件下で正確に画像差分を抽出するための前処理として、筆者らはAKAZE特徴量及び相互情報量による連続画像のブレ補正を行っている[100]。劣化診断対象物の変動時間スケールは様々であるため、異なる複数の時間スケールでのタイムラプス動画像生成が求められる。本研究では京都大学スパコン上にOSSであるFFmpegとOpenCVの並列処理環境を構築し、1分から1年程度の時間スケーラブルな複数タイムラプス動画像生成を行い、建築物変形・地滑り兆候(長時間スケール)[101]–[103]や河川増水・煙検出(短時間スケール)の検出に対応する。3.6ボリュームコミュニケーション科学分野の共同研究において、複数の研究者同士がインターネットを介して三次元可視化オブジェクト(ボリュームデータ)をリアルタイムに共有できる環境は重要性が高い。特に、現在のCOVID-19によるコロナ禍においてオンラインコミュニケーションは重要である。一方、近年多くの科学研究分野で利用されている3次元可視化アプリケーションは、多地点遠隔地におけるボリュームデータ共有機能が限定的であることが指摘されている。筆者らは大規模シミュレーションの可視化で有名な汎用三次元可視化ソフトウェアであるAVS (Application Visualization System)のボリュームコミュニケーション技術開発を行った[104]。AVSから派生したビューアーである3D AVS Playerをベースに、多地点遠隔ボリュームコミュニケーションシステムの設計及び実装を行った。このシステムでは、VPNによりユーザがプライベートネットワークに用意されたVENUEに参加する。VENUE 内では、すべてのユーザが同じ GFA ファイルを取得する。取得した GFA ファイルの視点情報と時刻情報は、マルチキャスト通信によってVENUEに参加しているすべてのユーザに同期配信される。一般にデータ共有時にはすべてのユーザがデータを取得するまでの時間がかかるため大規模3次元可視化データのリアルタイム共有は容易ではないが、HpFPにより高速でのデータシェアリングが可能になる。たとえば10 Gbps通信では10 GBのデータを10秒程度でシェアリングできる。一方、プレビューにおいてはパラメータのみを通信するために、ネットワークの広帯域を必要としない利点がある。また、マルチキャスト通信を用いているため、システムの通信部が比較的シンプルなデザインでの実装が可能である。本システムは、筆者らが開発した仮想地球環境システム(VEMS)[105]に適用され、実際に地球磁気圏の磁力線やプラズマ運動可視化を遠隔多地点やTDW(タイルドディスプレイ)でボリュームシェアリングすることに成功した。なお、このシステムは 3D AVS Player を視覚型 VR システムとして利用する際には、リモートコントローラとしても利用が可能である。3D AVS Player が動作する計算機のネットワーク内に VENUE を構築し、コントロールする計算機をこの 図29 AKAZE特徴量によるカメラ画像ブレ補正結果[100]図30OpenCV(スティッチング)による超高解像画像生成技術:CX2570上で処理の並列化により96K解像度画像生成(現在は16Kに成功)794-3 時空間データGISプラットフォーム

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