ニュース、気象予報番組)において幅広く利用されている。報道については、たとえば、2019年の大規模台風10号や19号ではNHK「ニュースウォッチ9」、テレ朝「サタデーステーション」、TBS「Nスタ」など、30以上の全国放送や地方番組でひまわりリアルタイムの静止画像・動画像が利用された。他の類似アプリと比較して任意の画角の画像をWeb上で作成できる点で秀でており、報道利用が多い。また、世界最大の気象予報企業であるウェザーニューズ社がネットニュース番組において、ひまわりリアルタイムを用いている(図34)。ひまわりリアルタイムをクロマキー処理することで気象予報士が画面上に立ち、指差し等で気象現象を解説する。一般的なテレビの「天気予報」と異なり番組内でリアルタイム画像を利用することで、天気予報としては理想的な最新ひまわり画像を用いた番組を実現している。宇宙開発利用[112]の視点からひまわりリアルタイムを支えるICTとして、①高速データ伝送技術(3.3)、②並列分散処理技術(2.2)、③スケーラブル時空間可視化技術(3.1)、④先端的WebGIS技術(3.2)、⑤AI型画像処理技術開発(3.5)を進めている。①3.3で述べた独自開発の高速データ通信プロトコルHpFPによる高速データファイルツールHCPは、ひまわり衛星ピラミッドタイル画像のようにファイルサイズが小さくファイル数の大きなデータセットの高速転送に適している。そのため、JAXA(防災インターフェースシステム)及び気象庁(ひまわりクラウドシステム)において採用されている。②2.2で述べたGfarmのアフィニティースケジューリングによりデータのローカリティーを最大限活用する技術であるGfarm/Pwrakeをベースとして、ひまわり画像のピラミッドタイル生成をNICTサイエンスクラウド及びJHPCN広域分散クラウド上で行っている。③時系列ピラミッドタイル画像を高速可視化表示するJavaScriptを独自開発し、ひまわりリアルタイムで利用すると同時に無償公開している[106]。④バイナリベクタタイルデータにより高速な3次元GIS可視化が可能なMapbox GL JS、three.jsをベースに地球などのグローバルな3次元表示が得意なiTownsとひまわりリアルタイムを組み合わせることで、地球規模の気象データから地域情報・タウン情報などのGIS空間情報を時空間内で連続的に接続可能となった。⑤AIにより全バンドデータから可視画像だけでは分からない台風内部構造の分類を北海道情報大学と共に進めている。4.2千曲あんずプロジェクト4.2.1千曲あんずネットワーク千曲あんずプロジェクトは、2018年から始まった長野県千曲市内全域を実験フィールドとする地域実証実験課題であり、3で述べた様々な要素技術の今後の実用化を視野に入れた、社会実証実験及び社会実装検討のためのプロジェクトである[113]。特にLPWA技術の一つで長距離通信性能が高いLoRa通信や映像IoT技術(モバイル環境での高品質映像伝送技術と画像処理技術)を活用して、千曲市の生活、防災、環境、産業などへの新しい寄与の可能性を検討及び検証することを目指している。2019年度までに基本となる14か所の千曲市内中継局網(図39の千曲あんずネットワーク)を構築し、LPWA通信環境実験、中継局安定性調査検討、気象データ分析、映像処理技術開発などを進めてきた。LPWA(LoRa)基礎通信実験では、各中継局間でのLoRa通信性能評価を実施した。LPWA中継局にはEASEL社とRFLink社の2種類のLoRa通信モジュールを搭載しているが、本実験ではEASEL社のLoRa通信モジュールを用いて千曲市内の通信環境実験を実施した。独自開発のLoRa発信機(エアチェッカー)で図39 千曲あんずネットワーク中継局(2021年時点)[113]図38 ひまわりリアルタイム技術と海外展開(ミラーサイト)82 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
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