市街地をサーベイし、14か所の中継局のうち1局以上にデータ通信可能なエリアマップを作製した(図40)。地理的に見通しがある場合についてはおおむね通信可能であることを確認し、特に姨捨のように高所(平野部よりも200 m高所)の中継局は有利であることを定量的に確認した。一方で、見通しのあるなしに関わらずパケット到達率は全体に20%~90%程度である場合が多く、パケットロスの原因解明が必要であることも分かった[113]。この成果は、東南アジア諸国での減災研究でも活用が始まっている[114]。あんずネットワークでは中継局のLoRa通信機器や映像IoT機器を安価なシングルボードコンピュータであるRaspberry Pi(RPi)で構成している。LoRa通信で用いているRPi zeroは省電力性のアドバンテージがあるが、一方で24時間/365日の連続運転時では頻繁にシステムダウンの症状が確認された。調査の結果、CPU負荷によるクロック周波数自動切換え時に正常ではない振る舞いをすることが分かり、クロック周波数固定により回避できることを確認した。同時に、タイムスケジューリングできるウオッチドッグ(HATボード)(図41)を開発し、①ハートビート(HB)による監視、②定常的にシステムリブート、③一定時間特定プロセスからの応答がない場合は強制リブート(HBでは検出できない)など冗長性の高い死活監視を実施した。その結果、2020年10月以降は14か所の中継局は一度も停止しておらず、システムの安定化に成功した[115]。気象センサー基本性能検証として、11か所(図39)の中継局の設置したヴァイサラ社の気象ステーションデータ(気温、湿度、気圧)を統計的に近隣の気象庁アメダスデータ(「長野」「信濃大町」)と比較した。11か所の気温データについては有為(相関係数90%以上)に相関があり、ヴァイサラセンサーは正しく観測を行っていると判断した。ただし、気象ステーション設置環境(壁に近い、屋上のヘリに近いなど)によっては正しくデータが取得できないこともがあることが分かった。図40 千曲あんずネットワークLPWA(LoRa)通信マップ[113]図42 降雪画像処理による降雪自動検出[116]図41RPiのハートビート監視によるウォッチドッグ:①電源断からの再通電による完全リセット動作機能、②定時再起動(RPiへの安全なシャットダウンを促す機能)、③インターバル自動起動機能(定期観測などの利用を想定)[115]834-3 時空間データGISプラットフォーム
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