装することが有効である。たとえば、4.2.1の多地点映像伝送ネットワーク(千曲あんずネットワーク)で長野県千曲市市街部全域を実証実験フィールドとするなどを検討中である。あとがき本稿を記述している2021年は、1年以上続くCOVID-19によるコロナ禍から社会は脱却しきれていないパンデミック状況が世界的に継続している。人々の社会生活はこのウィルスにより多大な影響をうけ、個人活動も経済活動も目に見えない疫病による大きな制約を受けている。これほどまでにAI(人工知能)への期待が高まっているにもかかわらず、現在のCOVID-19によるコロナ禍において、人類は近未来の感染傾向の予測すら成功していない。これは、予測モデル精度の問題もあるが、高い精度で予測するためのデータが十分ではないことも要因の一つである。デジタルデータはネットワークを通じて社会のあらゆる機能を高めるための重要な情報である。著者らはデジタルデータ指向型社会の基盤の一つとして、時空間データGISプラットフォームを提案している。本稿では、2000年以降に多様な科学データにデータベースやデータ伝送など多角的に携わった結果、同プラットフォームを提案するに至るこれまでの取組について詳細に報告した。まず、CyberEarthコンセプト及び第4の研究手法としてのインフォマティックスについて紹介し、さらにこれらを実現するためのビッグデータ処理基盤となるサイエンスクラウド及びJHPCN広域分散クラウドについて述べた。時空間データGISプラットフォームはCyberEarthを広域分散クラウドで実現するためのプラットフォームであり、ビッグデータを対象としたデータ伝送技術、データ収集技術、データ管理技術、データ処理技術、データ可視化技術などの様々なエコシステムをライブラリ(API)やアプリケーションとして提供する。ユーザはこれらをマッシュアップすることによりプラットフォーム上で目的に応じた時空間データGISアプリケーション開発が可能であり、NICTの新しい提案であるDCCS(Data Centric Cloud Service)での利活用が期待されている。筆者らは、時空間データGISプラットフォームが多くの分野で利用されるためには、まずは自らが同プラットフォームの有効な活用事例を示すことが必須であると考えている。これにより、エコシステムやAPIをどのように活用し、それによりどのようなアプリケーション・システムが実現するかの手順の事例を示すことができる。そこで本稿ではその開発事例として、年間300万アクセスを有するひまわりリアルタイムアプリケーションと10以上のアカデミア・自治体・民間企業が連携して長野県千曲市において進めている千曲あんずプロジェクトを紹介し、その有効性や応用事例について議論した。時空間データGISプラットフォームは、すでに河川氾濫監視プロジェクト、遠隔農業実習、キレイな空気プロジェクト、遠隔火山監視、民間企業による自治体へのソリューション提案など多岐にわたるプロジェクトでの活用が進められており、今後も広く展開が期待される。謝辞本研究は、NICT・総合テストベッド研究開発推進センター(とくに研究開発用テストベッドJGN)の協力を得て行ったものです。学際大規模情報基盤共同利用・共同研究拠点(JHPCN)課題(課題番号: jh210009-MDH)は副代表である深沢圭一郎氏(京都大学・学術情報メディアセンター)、分担者である岡部寿男氏(京都大学・学術情報メディアセンター)、菅沼拓夫氏(東北大学・サイバーサイエンスセンター・情報通信基盤研究部)、江川隆輔氏(東北大学・サイバーサイエンスセンター)、阿部亨氏(東北大学・サイバーサイエンスセンター)、建部修見氏(筑波大学・計算科学研究センター)、日下博幸氏(筑波大学・計算科学研究センター)、樋口篤志氏(国立大学法人 千葉大学・環境リモートセンシング研究センター)、片桐孝洋氏(名古屋大学・情報基盤センター)、嶋田創氏(名古屋大学・情報基盤センター)、大島聡氏(名古屋大学・情報基盤センター)、小野謙二氏(九州大学・情報基盤研究開発センター)、岡村耕二氏(国立大学法人九州大学・情報基盤研究開発センター)、南里豪志氏(九州大学・情報基盤研究開発センター 先端計算基盤研究部門)、笠原義晃氏(九州大学・情報基盤研究開発センター)、竹中栄晶氏(宇宙航空研究開発機構・地球観測研究センター)、原田浩氏(理化学研究所・計算科学研究センター 運用技術部門)、片岡龍峰氏(国立極地研究所)、田浦健次朗氏(東京大学・情報理工学系研究科)、山口龍太郎氏(東京大学・情報理工学系研究科電子情報学専攻)、小林一樹氏(信州大学・学術研究員工学系)、鈴木彦文氏(信州大学・総合情報センター)、木村智樹氏(東北大学・学際科学フロンティア研究所)、土屋史紀氏(東北大学・大学院理学研究科)、垰千尋テニュアトラック研究員(NICT・電磁波研究所)、村上豪氏(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所)、北元氏(宇宙航空研究開発機構・宇宙科学研究所)、Pavarangkoon Praphan協力研究員(NICT・総合テストベッド研究開発推進センター)の皆様の協力を得ています。なお、各メンバー5854-3 時空間データGISプラットフォーム
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