HTML5 Webook
95/124

まえがきSDGs(Sustainable Development Goals)は、2015年9月に国際連合で採択された、国連加盟193か国が2016年から2030年の15年間で達成すべき目標である。SDGsが掲げる目標には“インクルーシブな社会”と密接に関係する目標やターゲットが多く、SDGsを発表した「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」の本文で“インクルーシブ”は40回出てくるキーワードとされる[1]。“インクルーシブな社会”については、差別の問題や障害者の権利と併せて議論されることが多いが、これらの課題に限定されることなく、社会を構成するすべての人は多様な属性やニーズを持っていることを前提とし、性別や人種、民族や国籍、出身地や 社会的地位、障害の有無など、その持っている属性によって排除されることなく、誰もが構成員の一員として分け隔てられることなく、地域であたりまえに存在し、生活することができる社会を指す。このようなインクルーシブ社会の実現には、Beyond 5Gないしは6Gとしての情報通信技術の発展と寄与が欠かせない。既に情報ネットワークは我々の暮らしにおいて、水道・電気・ガス1本稿では、2030年代における社会を自律移動型のロボット自律型モビリティ活躍社会と位置づけ、自らが置かれた環境や状況等をリアルタイムかつ詳細に把握し、自らの判断できめの細かい移動制御を行うことが可能なモビリティ自身の移動力によってデータを運び流通させると同時に、超高周波IoT無線を使い近接した他のモビリティとの間でデータの交換を行うことで、発生したデータを宛て先まで転送するデータ流通テストベッド、「Piggy-back Network」の構想について述べる。Piggy-back Network実現の鍵となる3つの課題①近接機会を活いかす技術、②近接機会を創出する技術、③近接機会を管理する技術のうち、特に①近接機会を活かす技術について、すれ違い通信における通信容量についての理論的な考察も踏まえて議論したうえで、自律移動型ロボットを用いた実証システムによって得られた検証結果について述べる。This paper describes the concept of the Piggyback Network, which is a testbed network to en-able data transfer and switching utilizing autonomous mobilities with millimeter-wave IoT devices, based on a forecast that a lot of distributed autonomous mobilities will support 2030’s society. It is discussed that three technical challenges, i.e., the techniques to exploit a proximity chance and time, to intelligently create proximity chances, and to manage proximity chances, should be pursued in order to make the concept into reality. In particular, the technique to exploit a proximity chance is detailed and the potential channel capacity obtained via passing communication between two mo-bilities is theoretically analyzed. The concept is prototyped using autonomous service robots and the demonstrative proof of concept is performed.4-4 自律型モビリティ活躍社会におけるソーシャルICTデータ流通テストベッド“Piggy-back Network”の研究開発4-4Research & Development of Social-ICT Data Distribution Testbed “Piggy-back Network” in the Autonomous Mobility Active Society4-4-1 Piggy-back Networkの概念とモビリティ間近接機会利活用技術の研究開発4-4-1The Concept of Piggy-back Network and the Research & Development of the Technique to Exploit Proximity Chances between Mobilities荘司洋三 中内清秀 渡辺良人SHOJI Yozo, NAKAUCHI Kiyohide, and WATANABE Yoshito914 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発

元のページ  ../index.html#95

このブックを見る