向へのデータ搬送が可能となる。データの搬送に貢献するモビリティについては、データ転送サービスに専用化した形態も考え得るが、基本は既存の我々の暮らしに必須のサービス(教育、医療、福祉、飲食、公共、運搬等)を提供するうえで必要な固定設備と、それに付随するモビリティの活用が重要と考える。特にデータの物理的な移動に貢献するモビリティについては、通常、何某かの本来サービスを提供するために、ある拠点からある拠点へと目的を持って移動するわけであるが、このモビリティの移動と、転送したいデータの移動ニーズ(転送ニーズ)が合致した場合に、上記モビリティに該当データの“ついで搬送”を依頼することは、様々なエネルギー消費の側面から見ても効率的と考える。また、冒頭でも述べたように、2030年代は、少子高齢化や過疎、人手不足といった社会課題への対策として、人やモノを運ぶための移動手段(車両等)の駆動手法が、人自身によるマニュアル運転中心から、目的に則した適切な移動制御を自律的な判断に基づいて行う自律型モビリティへと急速に置き換わっていく過渡期と考えられる。クラウドリソースとも連携したエッジコンピューティング技術の進展にも支えられ、各種サービスの提供を目的とした自律型モビリティが、オーナーが事前に設定したポリシーに従い、様々なきめの細かい条件をリアルタイムに考慮したうえで、可能な範囲の余剰リソース(エネルギーや時間)をほかの目的と共有する形態のシェアリングエコノミーが台頭すると考えている。Piggy-back Networkについても、このような方法で、極めて多様な事業者が、自らが本来サービスの提供を目的として保持する施設やモビリティの余剰リソースを提供することで地域のデータ流通を効率的に行うことが可能になると考えられる。一方で、目下のUber社によるサービスのように、サービス提供者を個人レベルまで行き渡らせるプラットフォーム運用者も現れるであろう。2.2Piggy-back Networkが目指す最終動作ゴールデータの地産地消をベースに、人流・物流にデータの流通も託すことをネットワーキング原理とするPiggy-back Networkであるが、目指している最終動作ゴールとしては「最寄りに尋ねれば何でも知っている(Neighbor Knows Everything)」状態を目指している。言うまでもなく、本来必要な情報は分散しており、特定の場所にしか存在しないものも多いことから、これは情報の利用者視点で見たときにあたかもそのように見える振る舞いをするということである。データの地図1 Piggy-back Networkとデータ流通・利活用の概念Mobile facilitiesPublic transportation servicePost serviceConvenience-store serviceGarbage collection / road maintenance serviceNursing-care / school serviceCommodity distribution serviceFood/drink distribution serviceFixed facilitiesLifeline facilitiesAutonomous mobilitiesRequest data at a specific location & timeRequest the information of a specific eventAutomatically collected image data at the specific location & time providedThe possibility, the location & the timefor the requested specific event94 情報通信研究機構研究報告 Vol.67 No.2 (2021)4 NICT総合テストベッドの新たな可能性に向けた研究開発
元のページ ../index.html#98