いる。この同時通訳システムを実現するために、総務省が2020年3月に発表したのが「グローバルコミュニケーション計画2025」である。この計画では、大阪・関西万博が開催される2025年を見据え、これまでの一文単位の「逐次翻訳」から、「同時通訳」へと技術を進化させ、ビジネスや国際会議などの場面においても利用可能な実用レベルのAI同時通訳を実現することを大きな目標の一つとしている。コロナ禍の影響により生活スタイルが大きく変化したことにより、リモートによる多言語対応のニーズも増え、計画の重要性もますます高まっている。NICTはこの計画に基づき、民間企業とともにコア技術の研究開発と社会実証を推進している。これまでの「逐次翻訳」では、ビジネスシーンのように長い発話のやりとりがある場面では翻訳結果が得られるまでに時間がかかってしまう。これに対し、人間の同時通訳者のように発話の途中でも訳出できるところから次々に訳出するためには、意味的なまとまりを検出して切り出す必要がある。例えば、図4の左上の例のように「今日は良い天気ですね。暑くなりそうです。」という発話に対し、「今日は良い天気ですね」で切り出す技術が必要となる。これが入力分割点検出技術である。また、省略の多い日本語を外国語に翻訳する際に、話の流れを考慮して省略を適切に補うといったことが難しい。例えば、図4の右上の例のように日本語の「セーター」を英語に翻訳する際に、誰のセーターであるかを補う必要がある。その際、文脈を遡ることにより多様な情報を取り込んで曖昧性を解消し、正しく彼のセーターであると推定する技術が必要となる。これが文脈処理技術である。もう一つ重要なのがマルチモーダル技術である。例えば、図4の右中段の例のように、英語の“bank”は日本語では二つの訳語があるが、音声やテキストの情報だけでは正しく訳語を選択できない場合がある。その際、ほかに参照できる画像情報などを参考に、より精度良く訳語を選択する技術が必要となる。これらの技術を高度化し、低遅延と高精度を両立させることにより、講演やビジネス会議でのやりとりを次から次へと適切に翻訳することが可能となる。NICTでは、民間企業とともにこれらの技術の研究開発に取り組み、2025年を目途に実用レベルのAI同時通訳の実現を目指す。また、これとともに、例えば、図4の下段に示すような講演通訳、ガイド通訳、会議通訳、遠隔協業など、様々な場面でAI同時通訳が活用されるよう、技術の普及に努め、これらの技術が2025年開催予定の関西・大阪万博でも広く活用されるようにしたい。文文脈脈処処理理・・ママルルチチモモーーダダルル技技術術・・・to ”the mobile phone operators” ・・・between “the mobilephone operators” ・・・”the mobile phone operators” are・・・・・・「携帯電話会社」に・・・「携帯電話事業者」間の・・・「ケータイ会社」は・・・講演・プレゼン(1対Nの片方向通訳)文文脈脈にに応応じじてて語語彙彙もも統統一一話話者者のの意意図図もも補補完完In the beginningof the seventeenth century・・・江戸時代初期に・・・観光ガイド(1対Nの片方向通訳)ビジネス会議(N対Nの双方向通訳)PPuusshh tthhee bbuuttttoonnDDoonn’’tt ttoouucchhPush the left buttonそのボタンを押してリアルタイム性が必要な業務に活用遠隔協業(他のデバイスと組み合わせユーザインタフェースを⾼度化)社社会会実実証証・・ササーービビススイイメメーージジ2025年⼤阪・関⻄万博での利活⽤(想定イメージ)入入力力分分割割点点検検出出技技術術研研究究開開発発図4 AI同時通訳実現のための研究開発と社会実証・サービスイメージ72-1 多言語コミュニケーション技術の概要
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