まとめ本稿では、誰もが分かり合えるユニバーサルコミュニケーションの実現に向けた取組の一つとして、言葉の壁をなくす多言語コミュニケーション技術にフォーカスを当てて概要をご紹介した。VoiceTraⓇでもお試しいただけるNICTの逐次翻訳の技術は、様々な形態で民間サービスなどに採用され、産学官の力を結集した成果として大きく社会に広がっている。現在、ビジネス・国際会議での講演や議論の場面などで逐次翻訳では対応しきれないニーズに応えるため、2025年を目途にAI同時通訳を実現し、普通に使われる技術とすることを目指している。さらに、総務省が推進するグローバルコミュニケーション計画2025では、2025年の5年先である2030年を目途に、シビアな交渉にも使える同時通訳を実現するという目標が掲げられている。この一段高い目標を達成するには、言葉の壁をなくすだけではなく、相互理解を支援する工夫も必要となる。そのために、本特集号の1「緒言:ユニバーサルコミュニケーション研究所における研究開発について」で述べた3つのコア技術、すなわち、ビジネスで使える低遅延のAI同時通訳を可能とする多言語コミュニケーション技術、仮想的人格を用いてユーザの興味・背景に合わせた対話を可能とする社会知コミュニケーション技術、パブリック/プライベートデータを連携させた実世界の状況分析・予測を可能とするスマートデータ利活用基盤技術及びユーザインタフェースの工夫などコミュニケーションの質を向上させる技術を有機的に結びつけ、その課題を克服したい。参考文献】【1総務省, “グローバルコミュニケーション計画,” https://www.soumu.go.jp/main_content/000285578.pdf, April 2014.2総務省, “「グローバルコミュニケーション計画2025」の公表,” https://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01tsushin03_02000298.html, March 31, 2020.内元 清貴 (うちもと きよたか)ユニバーサルコミュニケーション研究所研究所長/先進的音声翻訳研究開発推進センター研究開発推進センター長/先進的リアリティ技術総合研究室室長博士(情報学)自然言語処理【受賞歴】2001年 情報処理学会 2001年度(平成13年度)山下記念研究賞隅田 英一郎 (すみた えいいちろう)NICTフェロー/ユニバーサルコミュニケーション研究所先進的音声翻訳研究開発推進センター先進的翻訳技術研究室室長博士(工学)自然言語処理 【受賞歴】2020年 内閣府 第2回日本オープンイノベーション大賞総務大臣賞2013年 内閣府 第11回産学官連携功労者表彰 総務大臣賞2010年 文部科学大臣 科学技術賞河井 恒 (かわい ひさし)ユニバーサルコミュニケーション研究所先進的音声翻訳研究開発推進センター先進的音声技術研究室室長博士(工学)音声情報処理【受賞歴】2015年 電気通信普及財団 第31回(2015年度)電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術賞)2014年 電子情報通信学会 2014年度論文賞2010年 情報処理学会 2010年度喜安記念業績賞香山 健太郎 (かやま けんたろう)ユニバーサルコミュニケーション研究所総合企画室室長博士(工学)人工知能 38 情報通信研究機構研究報告 Vol.68 No.2 (2022)2 多言語コミュニケーション技術
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