HTML5 Webook
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の詳細については本特集号3-5 [13]を参照。)WEKDAやMICSUSで雑談を実現する基本的な原理は、入力されたユーザ発話を質問の形式に自動で変換し、その質問をWISDOM Xに入力して得られた回答を整形してシステムの応答とするというものである。例えば、「介護施設でロボットは使われるのかな」というユーザ発話を「介護施設でロボットを使うとどうなる」や「介護施設でロボットを何に使う」のような質問の形式に変換し、その質問をWISDOM Xに入力して得られた回答を利用して応答を作成することで「介護ロボットが介護施設に普及が進めば離職率が下がりますよ」といった応答を出力することができる。このように質問応答を経由して応答を作成する一連のプロセスは「ユーザがUというユーザ発話をしたので、Qという質問の回答を教えてあげれば今後の行動等で有用もしくは参考になる可能性があるため、 その回答を含む応答をする」という「応答の理由」に基づいた応答生成とみなすことができ、WEKDAやMICSUSによる雑談はまさにその「応答の理由」を考慮した応答作成の処理だといえる。また、「介護施設でロボットを使うとどうなる」のような質問の回答から応答を作成することで、「介護施設でロボットを使う」ことに関する将来のチャンスやリスク等に関する情報を提供できる雑談につなげることができる。このように質問応答を経由した雑談の作成はユーザにとって興味深い応答を返すことにつながることが期待できるが、質問応答の出力形式と雑談の応答として出力したい形式に齟齬があるため、そのまま質問応答の出力を無加工で雑談の応答に利用することはできない。例えば、WISDOM Xを用いた質問応答では知識源であるWebテキストに書かれた内容をそのまま回答として出力するため、それをそのまま雑談の応答に利用すると冗長で不自然な発話となってしまう。そこで、回答を含む文から発話として利用できる部分を抜き出し、自然な文として整形するといった生成の処理が必要となる。また、WEKDAやMICSUSでは雑談だけでなく「なに」「どうやって」「なぜ」といった質問を行い、WIS-DOM X経由で回答を得ることが可能である。これは、雑談でシステム応答として提示された内容を質問応答で深堀りして知識を得る場合に有益であり、例えば、上の発話例の場合は「離職率が下がる」という情報が提示された後で、ユーザが「なぜ介護施設でロボットを使うと離職率が下がるのか?」のような質問をすることで、更に深堀りして知識を得ることができる。ただし、この場合もWISDOM Xが提示する回答は、「なぜ」や「どうやって」といった質問に対しては表5の回答パッセージに示すような回答箇所を含む比較的長いテキストを、一定の表現は省略されるものの出力するように設計されているが、そのままではシステムの応答として利用することができない。そこで、この場合も回答箇所を含み、かつ、コンパクトで自然な回答を生成するといった回答要約の処理が必要となる。実際のWEKDAの出力例を図2に示すが、このようにコンパクトに回答を要約することで、音声対話システムで音声のみで回答が提示された場合でも回答が容易に理解可能となる。本稿では上述の雑談発話生成と回答要約の2種類の生成課題のうち、回答要約について紹介する。3.1「なぜ」型質問応答の回答要約DIRECTにおける生成処理の一例として、表5の具体例を用いて「なぜ」型質問応答の回答要約の処理を説明する。回答要約の入力は「なぜGoogleの機械翻訳の質は劇的に向上したのか」のようなユーザが入力した質問: なぜGoogleの機械翻訳の質は劇的に向上したのか。回答パッセージ: 深層学習の技術は近年注目を集めており、高度な技術を持った企業が最新の深層学習の研究成果を各種サービスに統合することに対して意欲的だった。例えば、Google Brainチームは、そのような技術をGoogleの機械翻訳エンジンに組み込む技術を開発した。これにより、フランス語や中国語などの言語に関して機械翻訳の質は劇的に向上し、他の多くの言語についても今後同じように質が向上することが他所される。どの程度になるのかは不明だが、深層学習の技術によって今後我々の未来が急激に変わるというのは間違いないようだ。回答要約: 深層学習技術が導入されたため表5 「なぜ」型質問応答の回答要約の具体例(作例)図2 WEKDAにおける回答要約の実行例1353-4 DIRECTにおける深層学習を用いた大規模自然言語処理

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