連情報のデータベースに人手を介さず直接対話の要約結果を登録し、AIによる介護プランの立案など様々な用途で活用することも可能である。現在は、ケアマネジャーがヒアリングの結果を思い出しつつ、データベースに介護モニタリングの結果として登録する必要があり、煩雑な作業となっていたが、そうした作業負担の軽減にもつながるものと思われる。2.2ユーザ発話意味解釈モジュールMICSUSの質問に対するユーザ発話の解釈は、ユーザ発話意味解釈モジュールによって行われる。このモジュールは、以下の5種類の解釈を実行し、対話はこれらの解釈結果に応じて展開される。1.と2. については質問の種類に応じて解釈を実行し、3.〜5.については基本的に全てのユーザ発話に対して実行する。1.YesやNoなどで回答可能な質問であるYes/No質問(例:「毎日3食食べていますか?」)に対する、ユーザ発話の分類(表1)2.名詞や短い文で回答可能な質問である自由回答質問(例:「昨日の夕飯は何を食べましたか?」「水分をとるためにどのような工夫をしていますか?」)について、回答が適切になされたか否かの判定(質問によっては高齢者が回答を拒否したり、回答を思いつかなかったりするケースがあり得る)と、ユーザ発話のうち回答を端的に表す部分(回答キーワード)の抽出3.雑談を展開すべきかの判定4.高齢者が過去に行った回答の訂正を意図した発話をしたか否かの判定5.後で尋ねる予定だった質問の回答を、ユーザが先に発話したか否かの判定これらの解釈は基本的に入力テキストの分類タスクとして定式化でき、3で説明するように深層学習技術、より具体的にはBERT [4]を使って実装されている。上記1.のYes/No質問についてより詳細に述べると、ユーザ発話意味解釈モジュールは表 1に示す6種類のラベルを出力する。分類結果が「その他」以外の場合、システムは「お薬をきちんと飲めていないのですね。それは心配ですね。」のような解釈結果を確認する応答を発話し、次の質問に進む。ただし、上記3.の判定結果によっては雑談を行うこともある。分類結果が「その他」の場合は、回答がまだ得られていないと見なし、同じ質問をもう一度聞き直す。質問の聞き直しは指定された回数まで繰り返すことができる。後述の実証実験では最大3回とした。また、最後の聞き直しでは、「はい」「いいえ」等のシンプルな回答を求める旨、システムが発話することで、更なる聞き直しの必要性を抑制する。上記2.の自由回答質問に対しては、回答されたかどうかを判定し、回答された場合は更にユーザ発話から回答キーワードを抽出する。対話例を図5に示す。この例では、「好きな動物な何ですか?」という質問に対して、「犬が好きです」と回答している。この場合は、回答があると判定され、回答キーワードとして「犬」を抽出する。回答キーワードは、「好きな動物は犬なのですね」のように、ユーザの回答に対するMICSUSの応答に含め、MICSUSがユーザの回答を正しく理解したこ図4対話結果確認・修正Webアプリ(スマートフォン版の画面。顔写真を除き実際の動作画面のスクリーンショット)ラベル説明例(質問「薬を水か白湯で飲んでいますか?」)Yes肯定「飲んでいます。」No否定「飲んでいません。」不明回答が分からない「覚えてないです。」前提矛盾質問の前提を否定「薬は飲んでいません。」回答拒否回答を拒否「答えたくないです。」その他上記5種類のいずれにも分類されなかった「薬は、えっと…。」表1 Yes/No質問に対する意味解釈ラベル144 情報通信研究機構研究報告 Vol.68 No.2 (2022)3 社会知コミュニケーション技術
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