とを伝える。さらに、この例では「犬」という単語が、雑談を開始するのにふさわしいトピックだと判断されたため、WEKDAによって生成された、犬の行動に関する雑談的応答をシステム側から発話している。なお、後述するように、ユーザ発話意味解釈モジュールを深層学習で構築する際の学習データには、Webから抽出したものも含め介護分野以外の質問やその回答等も含まれており、介護分野以外の対話でも高い精度で動作する。2.3対話シナリオ対話シナリオは、「適切なケアマネジメント手法」に基づいて、ユーザの健康や生活習慣などを問う質問を展開していくよう作成されている。以下ではその作成手順を説明する。まず「適切なケアマネジメント手法」に基づき、人手で質問とその回答に対するシステムの応答文を作成した。例えば、「毎日3食食べていますか?」という質問と、それに対してユーザがYesと回答した際の応答文である「それは良いですね。」やNoの場合の「それは心配ですね。」といった応答文を作文した。質問や応答文はユーザである高齢者が理解できるか、気分を害するような発言をしないかなど、介護の専門家も交えて議論を繰り返しつつ整備した。この作業に加えて、質問応答の結果に応じて次にどの質問を行うかという遷移情報を決定する作業が必要である。例えば、まず福祉用具を使用しているかを問い、それに対してYesの回答であれば、使用している福祉用具に対して不満や要望がないかなどの質問に遷移し、Noであれば別の話題に遷移する、といった具合である。作成した質問文等と質問の遷移情報を対話シナリオオーサリングツールに入力することで、対話システムで実行可能なXML形式の対話シナリオを得ることができる。なお、オーサリングツール等のMICSUSの各種モジュールは汎用的に作られており、介護と関連のない質問等にも対応できるので、介護支援以外を目的とした対話シナリオを作成することもできる。対話シナリオは、基本的に「適切なケアマネジメント手法」に基づいて人手で作成したが、人手による作業だけで柔軟な対話を実現することは難しい。例えば、ユーザ発話の解釈がうまくできなかった場合に再度同じ質問を聞く「回答の聞き直し」といったやりとりは全ての質問に対して発生し得るが、そのやりとりに対応する対話シナリオを逐一人手で追加するのは高コストである。そこで、シナリオ自動拡張モジュールによって、人が書いた骨格となる基本的対話シナリオを自動的に拡張し、回答の聞き直しのように対話中で広範に起こり得る一般的なやりとりを人手による記述なしで実行できるようにした。このシナリオ自動拡張モジュールによって、対話中の任意の箇所で発生し得る雑談機能の呼び出しや、一度行った回答を訂正するやり取りなどを行う対話シナリオなども実現しており、柔軟な対話が可能となっている。図5 自由回答質問と雑談の対話例(PC版の対話履歴確認・修正Webアプリの画面)1453-5 高齢者介護支援用マルチモーダル音声対話システムMICSUS
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