まえがき世界では、2050年までに人口の約70%が都市に集中すると言われており、都市環境の激変による環境、交通、防災、エネルギーなどの社会問題が複雑化してきている。国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)では、参加型で包摂的な方法による、安全、強きょう靭じんかつ持続可能な都市づくりが求められおり、我が国でもICTを活用しスマートで持続可能性の高い社会を実現するSociety 5.0の取組が進められている。そこでは、多種多様で膨大なセンシングデータから、実世界での様々な出来事や事象の関係性をAIを用いて効果的に発見・予測し、意思決定や行動支援で利用できるようにすることが重要となる。そのため、センシングした実空間の事象をサイバー空間に投影し、最適な解決策を見いだして実空間を駆動するサイバーフィジカルシステム(CPS)により、都市の環境を様々なセンサー等で稠ちゅう密みつにモニタリングし安全・快適な移動や防災などに役立てる取組が進められている。さらに、今後、実空間に分散した人やモノが高度なネットワークでつながることで、個々の人やモノの詳細な状況を随時把握し、最適な行動ナビゲーションを持続的かつタイムリーに行い行動変容を促し、地域ぐるみで課題解決を図る“スマートで持続可能な社会”を実現することが期待されている。こうしたことを背景に、我が国では、「広く多様なデータを活用して新たな価値を創出するためには、『データ連携』とそれを『活用したサービスを提供』する基盤(プラットフォーム)の構築が鍵となる。」との方向性が示されている(「包括的データ戦略」[1])。また、総務省の「Beyond 5G推進戦略」[2]では、「膨大なデジタルデータを AI 等の活用により解析することにより、フィジカル空間の状況の把握が随時可能となるだけでなく、その情報を基にフィジカル空間における次の行動の判断を行うことが可能となる。」と1スマートで持続可能な社会の実現を目指し、我々は、様々なセンシングデータを相互に連携させ、実世界の複雑な状況把握や、状況に適した行動支援に役立つ“actionable”なデータを生成し利活用するスマートデータ利活用基盤の研究開発を進めている。本稿では、実世界の様々なイベントデータを収集し分野横断的な相関を発見・学習・予測するデータ連携分析技術、個々のプライベートデータを共有することなく状況把握や行動支援のための共通の予測モデルを構築する分散連合AI技術及びこれらの基盤技術を実装したxDataプラットフォームの構築とこれを用いた共創型の課題解決を推進する取組について説明する。In order to realize a smart and sustainable society, we are conducting research and develop-ment of smart data analytics technology that associates various sensing data to generate and utilize “actionable” information useful for predicting complex situations in the real world and for supporting appropriate behaviors. In this paper, we describe the following topics: (1) cross-data analysis tech-nology that collects various real-world event data to discover, learn, and predict cross-disciplinary correlations; (2) distributed federated AI technology that builds common prediction models to under-stand situations and support actions without sharing individual private data; and (3) construction of xData platform which implements these fundamental technologies, and efforts to promote co-cre-ation-style problem solving by utilizing the platform.4 スマートデータ利活用基盤技術4Smart Data Analytics Technology4-1 スマートデータ利活用基盤技術の概要4-1Overview of Smart Data Analytics Technology是津 耕司ZETTSU Koji1514 スマートデータ利活用基盤技術
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