アプリケーションに組み込み評価実験を行ったところ、千葉県対象の注意報発令レベルの光化学オキシダント予測で92%(8時間以内)の予測精度を実現した。また、自治体の環境基準常時監視業務支援への受容性に関する評価を行ったところ、注意報発令の早期警戒(警戒解除)への利用可能性がアンケート調査により確認された。さらに対象となる自治体を拡大し、カスタマイズと性能評価を実施している。事業者がxDataプラットフォームの情報資産を活用することで、対象期間や自治体の変更はマニフェストファイル(観測局情報などの設定ファイル)から設定でき、検証結果の参照も容易になるため、過去の大気環境データを利用した予測精度検証の作業を効率的に進めることができた。また、事業者が持つ地域ごとの気象特性に関わるノウハウを取り入れ、予測精度を向上させるためのスクリーニング処理を行う独自プログラムの追加や、アプリケーションと連携した総合的な判断(風向による移流の評価など)を効果的に行うことができた。3.3ASEAN地域の環境問題対策への応用環境問題が深刻なASEAN地域の4研究機関(ブルネイ工科大、ベトナム ダラット大、シンガポール国立大、フィリピン イザベラ州立大学)とNICTが共同で行ったASEAN IVO プロジェクト“Reusable, Shar-able, and Transferable Smart Data Platform for Col-laborative Development of Data-Driven Smart Cities”(令和元~3年度)では、現地で収集したデータを用いて情報資産をカスタマイズし、煙霧越境汚染被害対策(ブルネイ工科大)やマルチメディアセンシング[10]による交通公害対策(ベトナム ダラット大)などに応用した(図9)。例えば、煙霧越境汚染被害予測では、xDataプラットフォームの環境品質短期情報資産を派生させ、ブルネイ及び周辺国の環境観測データを様々な情報源から収集するようデータローダーを改修するとともに、収集されたデータセットに合わせた予測モデル(CRNN)のチューニングを行い、ASEAN地域の大気汚染移流を予測できるようにした[11]。さらに煙霧越境汚染被害予測の情報資産の一部をMediaEval国際ベンチマーキングタスク[12]に公開し10チームの研究者らが性能改善を競うなど、研究者を巻き込んだ情報資産の性能改善を効果的に実現した。これらの結果、ASEAN IVOプロジェクト終了評価では、全8プロジェクト中第2位の高い評価を得た。ブルネイ工科大での煙霧越境汚染被害予測の研究成果は、同大学での越境汚染災害の研究や地元政府の公衆衛生危機管理への応用検討に発展した。ベトナムダラット大の交通公害リスク予測の研究成果は、同大学とダラット市インテリジェントオペレーションセン図9 ASEAN地域の環境問題対策への応用例(ASEAN IVOプロジェクト)図8 大気環境監視業務支援アプリケーション174 情報通信研究機構研究報告 Vol.68 No.2 (2022)4 スマートデータ利活用基盤技術
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