あとがき1回の再生のみの条件を公平な比較とみなせば、音声の文字起こし能力において、機械は速さと正確さの両面で既に人を大きく凌りょうが駕すると言って良い。しかし、聞き直しを許し、十分な時間を与えれば、人が最終的に優勢となった。機械が人に劣る部分は数値的にはわずかであるが、人がおかさないような誤りを含むので、コミュニケーションに及ぼす影響は小さくないと思われる。この残された部分は、開発者にはコーパス設計を含む今後の研究開発の課題を与えるとともに、利用者には、機械との付き合いでストレスをためないための知恵を与えることになる。謝辞人の書き起こし実験の準備、自動音声認識実験の実施、データ処理で協力いただいた研究室メンバーに感謝します。参考文献】【1R. P. Lippmann, “Speech recognition by machines and humans,” Speech Communication, vol.22, Issue 1, pp.1–15, 1997.2W. Xiong, J. Droppo, X. Huang, F. Seide, M. Seltzer, A. Stolcke, D. Yu, and G. Zweig, “Achieving human parity in conversational speech rec-ognition,” arXiv:1610.05256v2, 2017.3G. Saon, G. Kurata, T. Sercu, K. Audhkhasi, S. Thomas, D. Dimitriadis, X. Cui, B. Ramabhadran, M. Picheny, L.-L. Lim, B. Roomi, and P. Hall, “English conversational telephone speech recognition by humans and machines,” Proc. Interspeech, pp.132–136, 2017.4加藤 宏明, 河井 恒, 水上 悦雄, “人と機械の文字起こし能力比較:自動音声認識は人間を超えたか?,” 日本音響学会春季研究発表会講演論文集, pp.1373–1376, 2021.5https://ast-astrec.nict.go.jp/release/SPREDS2/download.html加藤 宏明 (かとう ひろあき)ユニバーサルコミュニケーション研究所先進的音声翻訳研究開発推進センター先進的音声技術研究室主任研究員博士(工学)音声言語コーパス、聴覚・音声コミュニケーション【受賞歴】1995年 日本音響学会 第12回粟屋潔学術奨励賞河井 恒 (かわい ひさし)ユニバーサルコミュニケーション研究所先進的音声翻訳研究開発推進センター先進的音声技術研究室室長博士(工学)音声情報処理【受賞歴】2015年 電気通信普及財団 第31回(2015年度)電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術賞)2014年 電子情報通信学会 2014年度論文賞2010年 情報処理学会 2010年度喜安記念業績賞水上 悦雄 (みずかみ えつお)ユニバーサルコミュニケーション研究所先進的音声翻訳研究開発推進センター先進的音声技術研究室主任研究技術員博士(理学)音声言語コーパス、コミュニケーション科学、対話研究【受賞歴】2008年 社会言語科学会 2007年度徳川宗賢賞萌芽賞426 情報通信研究機構研究報告 Vol.68 No.2 (2022)2 多言語コミュニケーション技術
元のページ ../index.html#32