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機能を利用して、テキスト中における強調や斜体などの書体情報を保存しての自動翻訳が可能である。NMTの技術を自動翻訳以外に活用することも可能である。みんなの自動翻訳では、同一言語内の翻訳としての観点から、長い文章を短くする短文化エンジンを公開している。短文化エンジンは、入力文を75%程度の文字数に短文化するようになっている。これにより、議事録などの音声書き起こしのテキストを本エンジンにより、簡潔なテキストにすることができる。たとえば、次のように短文化される。【原文】早速質問に入らせていただきたいと思います。【短文】早速質問したいと思います。さらに、VoiceTra®で対応している全言語について、全言語方向の自動翻訳を1モデルで実施できるようになった。そのため、本モデルを技術移転することにより、旅行会話を対象とした場合には、全言語方向について1モデルで自動翻訳が可能となりる。これによるメリットは、起動する翻訳エンジン数が少なくなることである。VoiceTra®では31言語に対応しているため、もし1言語方向に1エンジンとすると、言語方向としては 31 ×30 言語方向あるので、900エンジン以上が必要となり、翻訳エンジンのメンテナンスが困難になる。一方、1モデルで全言語方向の自動翻訳に対応できることにより、1エンジンで全言語方向の自動翻訳が可能になる。今後の展開NICTでは、みんなの自動翻訳に最新のNMT研究成果を展開すると同時に、翻訳バンクにより集積された対訳データを活用することにより、実用的で高精度なNMTを社会還元することを目標としている。自動翻訳エンジンの性能向上には、翻訳アルゴリズムの研究開発だけでなく、自動翻訳エンジンの訓練のための対訳データが非常に重要である。そのため、翻訳バンクへの対訳データのご提供について、皆様のご協力をよろしくお願いいたします。参考文献】【1「みんなの自動翻訳@TexTra®」を一般公開https://www.nict.go.jp/info/topics/2014/06/140619-1.html2ニューラル機械翻訳で音声翻訳アプリVoiceTraが更なる高精度化を実現https://www.nict.go.jp/press/2017/06/28-1.html3『翻訳バンク』の運用開始https://www.nict.go.jp/press/2017/09/08-1.html4内閣府:「第2回 日本オープンイノベーション大賞」受賞取組・プロジェクトの概要についてhttps://www8.cao.go.jp/cstp/openinnovation/prize/2020taishogaiyo.pdf内山 将夫 (うちやま まさお)ユニバーサルコミュニケーション研究所先進的音声翻訳研究開発推進センター先進的翻訳技術研究室上席研究員博士(工学)機械翻訳【受賞歴】2020年 内閣府 第2回日本オープンイノベーション大賞総務大臣賞2016年 電気通信普及財団 第31回電気通信普及財団賞(テレコムシステム技術賞)2014年 一般社団法人アジア太平洋機械翻訳協会 第9回AAMT長尾賞560   情報通信研究機構研究報告 Vol.68 No.2 (2022)2 多言語コミュニケーション技術

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