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まえがき日本と世界との結びつきは近年ますます強まっている。COVID-19感染拡大以前は訪日外国人が年々増加し、2019年には3,000万人を超えていた。在留外国人も大幅に増加しており、2021年6月末には約280万人となっている。大規模な国際イベントとして、2021年には東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会(以下、「東京2020大会」という。)が開催され、来る2025年には日本国際博覧会(以下、「大阪・関西万博」という。)の開催も予定されている。一方、COVID-19感染拡大以降、移動を伴わないWebを使用したオンライン会議も増加し、グローバルな会議への参加機会はむしろ増加することが見込まれる。このような中、コミュニケーションにおける「言葉の壁」をなくし、グローバルで自由な交流を実現するというニーズは大いに高まっており、総務省は2014年に「グローバルコミュニケーション計画」[1](以下、「GC計画」という。)を、2020年に「グローバルコミュニケーション計画2025」[2](以下、「GC計画2025」という。)を発表している。これらの計画では、社会実証・社会実装がアクションの一つとして掲げられ、我々もそれを実現するべく、研究開発に加え、多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra®(ボイストラ)」の運用・改良・「グローバルコミュニケーション開発推進協議会」(以下「GCP協議会」という。)の企画運営・実証実験・広報活動・技術移転活動等に取り組んできた。その結果、現在ではNICTの技術を活用した多様な音声翻訳サービスが実用化・普及して、行政手続・医療・交通・観光等の様々な分野で活用されるに至っている。東京2020大会でもNICTの技術を活用した製品・サービスが活用され、大阪・関西万博に向けた実証実験も開始している。本稿では、これらについて詳述する。グローバルコミュニケーション計画に至るまで             2.1多言語音声翻訳アプリVoiceTra®我が国の多言語コミュニケーション技術(資料によ12多言語コミュニケーション技術の社会実装に向けて、我々は、研究開発に加え、多言語音声翻訳アプリ「VoiceTra®」(ボイストラ)の運用・改良・「グローバルコミュニケーション開発推進協議会」の企画運営・実証実験・広報活動・技術移転活動の実施等に取り組んできた。その結果、現在ではNICTの技術を活用した多様な音声翻訳サービスが実用化・普及して、行政手続・医療・交通・観光等の様々な分野で活用されるに至っている。東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会でもNICTの技術を活用した製品・サービスが活用され、2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)に向けた実証実験も開始している。In addition to R&D, NICT has been engaged in operating and making improvements to our multilingual speech translation app “VoiceTra®.” We have also been playing an important role in the Council for Global Communication Development and Promotion, planning and operating, conduct-ing field experiments, public relation activities, and technology transfers, etc. As a result, various speech translation products and services that utilize NICT’s technology have been put into practical use and are disseminating among many fields such as administrative procedures, medical care, transportation, and tourism. Some of these were actually used during the 2020 Tokyo Olympic and Paralympic Games, and field experiments have been initiated in scope of the upcoming Expo 2025 Osaka, Kansai, Japan.2-4 多言語コミュニケーション技術の社会実装2-4Social Implementation of Multilingual Communication Technology香山 健太郎 河井 恒 隅田 英一郎 内元 清貴KAYAMA Kentaro, KAWAI Hisashi, SUMITA Eiichiro, and UCHIMOTO Kiyotaka832 多言語コミュニケーション技術

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