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とによりスムーズなコミュニケーションを実現する。本アプリも、2017年3月に株式会社フィートに技術移転され、運用されている。両アプリとも、定期的に展示会等でのアピールも行われ、2022年6月末現在で、「こえとら」シリーズは約63万回、「SpeechCanvas」シリーズは約23万回ダウンロードされている。グローバルコミュニケーション計画3.1グローバルコミュニケーション計画及びグローバルコミュニケーション計画2025前節のとおり多言語コミュニケーション技術の社会実装が始まりつつある中、2013年9月に、東京2020大会の開催が決定した。また、2013年の訪日外客数は、日本政府観光局が1964年に統計を開始して以来、初めて1,000万人を突破した。このような中、総務省は、世界の「言葉の壁」をなくしグローバルで自由な交流を実現するため、GC計画を発表し、NICTが開発した多言語音声翻訳技術を高度化し社会実装を推進していくことを掲げた[1]。NICTは、本計画に基づき、研究開発を推進するとともに本稿で述べる様々な社会実装に向けた取組を実施した。その結果、NICTの技術は、翻訳精度の向上や対応言語の拡大を実現し、多様な翻訳サービスが実用化・普及して、行政手続・医療・交通・観光等の様々な分野で活用されるようになった。東京2020大会でもNICTの技術を用いた製品・サービスが活用された。今後2025年に向けては、ビジネス・国際会議における議論・交渉の場面にも対応したビジネス力の強化、政府全体で進める観光戦略や外国人材受入れ政策を背景とした外国人との共生社会の実現、大阪・関西万博における日本のプレゼンス向上のため、多言語翻訳技術の更なる飛躍的発展が期待されている。このため、総務省は、2025年にはAIによる「同時通訳」を実現し、その社会実装を目指すなど、多言語翻訳技術の更なる高度化に向けた研究開発等を推進すべく、産学官が連携・協力して取り組む新たなミッション、ビジョン、目標、行動等の方針をまとめたGC計画2025を策定した[2]。3.2グローバルコミュニケーション開発推進協議会NICTでは、GC計画を遂行するために、2014年9月に先進的音声翻訳研究開発推進センターを設置し、民間企業との連携等により、オールジャパン体制で研究開発を推進した。さらに、NICTを中心に産学官の力を結集して多言語音声翻訳技術の精度を高めるとともに、その成果を医療・ショッピング・観光など様々な分野のアプリケーションに適用して社会実装していくために必要な検討を行い、GC計画の推進に資することを目的として、2014年12月にGCP協議会( https://gcp.nict.go.jp/)が設立された。NICTは、その事務局として本会を企画運営している。2020年6月までは「研究開発部会」及び「実用化促進部会」を設置して活動した。2020年6月からはGC計画2025を踏まえ体制を見直し、部会を同時通訳の実現に向けた「技術部会」と多言語翻訳システムの更なる普及・発展に向けた「普及促進部会」に刷新した(図5)。本会では、会員を主な対象として、産学官のシーズとニーズのマッチングの場としてのビジネスマッチング会合及び人材交流を活性化する場としての、総会・シンポジウム・部会・ワーキンググループなどの各種会合を各種会合を開催し、外部連携や共同研究を促進している。会員には、多言語コミュニケーション技術を利用した製品・サービスの研究開発やその商業展開を行うメーカ・各種サービス会社、ユーザとなる医療・ショッピング・交通・観光等の企業や団体、自治体、大学や研究機関の有識者等が含まれ、2022年6月時点で226会員となっている。2019年には、民間企業と共同で推進した事業化共同推進ワーキンググループの活動が、多言語音声翻訳プラットフォーム等を通じた多言語音声翻訳エンジン活用サービスのビジネス化に多大な貢献をしたと評価され、「情報通信月間」総務大臣表彰を受けた。続く2020年にも協議会全体の活動による多言語翻訳技術の向上と実用化への貢献が評価され「情報通信月間」総務大臣表彰を受けた。3図4 SpeechCanvas(NICT運用時)86   情報通信研究機構研究報告 Vol.68 No.2 (2022)2 多言語コミュニケーション技術

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