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きるよう、人工知能分野の研究を自ら行う国立研究開発法人として初めて、情報セキュリティマネジメントシステムに関する国際規格であるISO/IEC27001の認証を2021年度に取得した。4.6技術移転活動前節までの活動により、NICTに対し音声翻訳技術の利用に関する民間企業からの引き合いが年平均数十件ある。これらの機会を逃さず社会実装を促進するため、多言語コミュニケーション技術をライセンスする環境の整備を進め、技術移転を多数行っている。その準備としては、知的財産を所管する部門との連携を強化するなど、研究開発成果を特許等の知的財産として蓄積する体制の整備を進め、2016年度から2021年度までの6年間で92件の特許出願、33件の国内移行手続きを行い、72件の特許登録があった。研究開発成果であるソフトウェアやデータベースについても、商用ライセンスに耐え得る形でのパッケージ化を行い、研究開発の進展に伴って随時更新を行っており、直接ライセンス先は数十社にのぼる。また、直接のライセンス先が提供するオンプレミスサーバやAPIサービスを利用して音声翻訳サービスを行う民間企業も年々増加している。これらの民間企業によるNICTの技術を利用した製品・サービスは、2016年度から2021年度までの6年間で87件生まれた。これらの一部は前節のとおりWebでも公開しているが、その一例を図10に示す。2018年度には、多言語音声翻訳のライセンス事業を行う企業・団体の募集を実施し、その結果、株式会社みらい翻訳とライセンス事業に関する契約を締結した。みらい翻訳は2019年4月に多言語音声翻訳プラットフォームのサービス提供と音声翻訳ソフトウェアのライセンス事業を開始した。4.7NICTの技術を利用した製品・サービスの活用例東京2020競技大会において、ボランティア向けの冊子にVoiceTra®や、NICTの技術を活用した、はなして翻訳(株式会社NTTドコモ)・こえとら(株式会社フィート)が紹介され、活用された。VoiceTra®は、都内の競技会場や選手村周辺で、大会前後と比較して1,000件/日程度多く利用されたと推定される(図11)。NICTの技術を利用しているPOCKETALK(ポケトーク株式会社)も、都内の競技会場や選手村等に約300台配備され、活用された。また、3.3で述べた総務省からの受託研究「多言語翻訳技術の高度化に関する研究開発」の枠組で、ヤマハ株式会社と協力して、日本語・英語のMCアナウンサーの音声を、NICTの技術を用いて文字化・配信する実証実験を行い、約40のほとんどの会場にて活用された。POCKETALKは、シリーズ累計出荷台数90万台を超える手のひらサイズの携帯翻訳機で、一部の言語でNICTの技術を採用している。凸版印刷株式会社のサービスは日本郵便の全国約20,000局に「郵便局窓口音声翻訳」として導入され、また、宇都宮市役所など全国80以上の団体へ導入されている。2021年度には、ソースネクスト株式会社(当時)のPOCKETALK S・凸版印刷のVoiceBiz・コニカミノルタ株式会社のMELONが、新型コロナウイルスワクチン接種会場向けに提供され、また、MELONは、感染者の宿泊療養施設向けに提供され、活用されるなど、多言語コミュニケーション技術の利用が拡大している。他企業の製品・サービスも、自治体・医療・製造業・IT関連企業をはじめ、多数の分野・業界で利用が拡大し、2021年度にはそれらのライセンス料がNICTの知財収入の7割強を占めるに至った。NICTの技術移転先の作成した多言語翻訳システムの利用は、2016年度から2021年度までで、報道件数で475件確認された。まとめと今後の展開GC計画のもと、NICTでは、研究開発により翻訳精度の向上や対応言語の拡大を実現し、VoiceTra®への様々な機能の追加を進めた。また、多数の実証実験、多様な広報活動を実施して、NICTの技術の技術移転及び社会実装を進めた。その結果、現在では多様な音声翻訳サービスが実用化・普及して、行政手続・医療・5選手村周辺競技会場周辺図11 東京2020大会時のVoiceTra®利用状況932-4 多言語コミュニケーション技術の社会実装

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