31序説また、部門の構成は以下のとおりである。1.イノベーション推進部門(オープンイノベーション推進本部傘下)2.グローバル推進部門(オープンイノベーション推進本部傘下)3.デプロイメント推進部門(オープンイノベーション推進本部傘下)研究所と3つのセンター(ソーシャルイノベーションユニット傘下でないもの)は、中長期的視野に立って、リスクの高い基礎的、基盤的な研究開発を自ら実施しており、第4期中長期目標期間では、「観みる」、「繋つなぐ」、「創つくる」、「守まもる」、「拓ひらく」をキーワードに、個別の研究課題を5つの分野に集約・重点化し、研究開発を推進している。また、ソーシャルイノベーションユニットにおいては、研究開発成果の最大化と社会展開を目指して、地域連携・産学連携を戦略的に推進するとともに、傘下のセンターでは社会展開を強く意識した分野横断的な研究開発を実施している。センシング基盤分野の「電磁波研究所」は、「観みる」をテーマとして、NICTが長年にわたり蓄積し、発展させてきた電磁波計測の技術と知見を活いかして、社会を支える基盤技術としての高度化・高信頼化を行うとともに災害対応の強化を図るため、電磁波センシング基盤技術の研究開発を実施した。統合ICT基盤分野の「ネットワークシステム研究所」、「ワイヤレスネットワーク総合研究センター」は、「繋つなぐ」をテーマとして、現在のネットワークに顕在化し始めている諸課題の改善、解決に貢献するとともに将来にわたって高品質で高信頼なネットワークを支えていくために、ネットワーク基盤技術の研究開発を実施した。データ利活用基盤分野の「ユニバーサルコミュニケーション研究所」、「脳情報通信融合研究センター」、「先進的音声翻訳研究開発推進センター」は、「創つくる」をテーマとして、真に人との親和性の高いコミュニケーション技術を創造し、国民生活の利便性の向上や豊かで安心な社会の構築等に貢献することを目指して、AI技術を利用した多言語音声翻訳技術、ネットワークを介して社会に流布している情報、知識を有効活用する社会知解析技術、脳情報通信技術などの研究開発を実施した。サイバーセキュリティ分野の「サイバーセキュリティ研究所」では、「守まもる」をテーマとして、サイバー攻撃に実践的に対抗する次世代のサイバー攻撃分析技術、社会の安心・安全を理論面から支える暗号技術などの研究開発を実施した。フロンティア研究分野の「未来ICT研究所」では、「拓ひらく」をテーマとして、未来の情報通信の基礎となる新概念を創出し、情報通信技術の新たな道筋を開拓していくため、未来ICT基盤技術の研究開発を実施した。「オープンイノベーション推進本部」では、研究開発成果を最大化する業務として、技術実証と社会実証の一体的推進が可能なIoT実証テストベッド及び最先端人工知能データテストベッドの構築・運用、オープンイノベーション創出に向けた産学官連携等の取組、耐災害ICTの実現に向けた取組、戦略的な標準化活動の推進、研究開発成果の国際展開、サイバーセキュリティに関する演習などを実施した。このほか、国立研究開発法人情報通信研究機構法に基づく業務として、標準電波の発射、標準時の通報、宇宙天気予報、無線設備の機器の試験及び較正を実施した。さらに、研究支援・事業振興業務として、海外研究者の招へい、情報通信ベンチャー企業の事業化支援、ICT人材の育成等を実施した。以上のように、第4期中長期計画においては、5つの研究分野における基礎・基盤技術の研究開発業務と、研究開発成果を最大化して社会展開するための業務を両輪として実施しており、令和2年度においては、オープンイノベーションを実現するための推進体制を強化した。また、引き続き、研究開発支援をはじめとする各種支援や成果展開、国内外の他機関との連携等の業務も行ってきた。以下に、本年度の主な業務成果を示す。なお、各成果の詳細については、「3 活動状況」に示す。(1)センシング基盤分野①「リモートセンシング技術」では、豪雨の高精度予測を可能にする水蒸気観測の実現に向け、高出力パルスレーザの発振波長を広範囲にわたって長期間安定して制御する手法の開発に成功した。また、次世代ウィンドプロファイラにおけるアダプティブクラッタ抑圧システム(ACS)の開発、地表の高度計測や移動体計測等の機能を有した次世代航空機搭載合成開口レーダー(Pi-SAR)の研究開発、雲エアロゾル放射ミッション(EarthCARE)衛星搭載雲プロファイリングレーダー(CPR)の開発を行った。②「宇宙環境計測技術」では、国立研究開発法人情報通信研究機構法(以下、機構法)第14条第1項第4号に定められている「電波の伝わり方の観測、予報・異常に関する警報の送信等」の業務を着実に実施するとともに、様々な3次元電離圏電子密度分布に対応する電波伝搬シミュレータ(HF-START)の開発及びウェブサービスでの運用の開始、大気電離圏モデル(GAIA)のメジャーアップデート及びデー1 序説
元のページ ../index.html#11