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120■概要連携研究室では、NICTが強みとするAI技術とセキュリティ技術、脳情報通信技術等と他分野との連携によるオープンイノベーション型のAI研究開発に取り組んでいる。令和2年度は、前年度に運用を開始したAIデータテストベッド基盤システムのデータセット拡充を行い、計8ジャンル、50件のデータセットの公開開始をした。オープンイノベーション型研究プロジェクトの推進として、AI×セキュリティの研究開発、AI×脳科学の連携研究開発を推進し、多数の学術的成果を得た。さらに量子機械学習に関する研究開発にも取り組み、量子インスパイアドアルゴリズムを用いた正準相関分析法(qiCCA)のツールをAIデータテストベッド上で公開した。■令和2年度の成果令和2年度は、以下の重点的研究開発課題に取り組んだ。1.AIデータテストベッドの設計と開発AI及びICT分野の研究開発等に利用可能な7件のデータセット(ジャンルを1件新設)をデータ公開用Webサイト(公開基盤)から追加公開した(図1)。このうち、Wikipediaで学習した日本語BERT(パラメータ1.6億個)データは、他機関から公開済みのものよりも高性能であると評価され、公開後約10か月で2,743件のダウンロードを達成した。その他、利便性向上を目的として、あいまい検索機能のサービス提供を開始した。さらに政府推進の人工知能研究開発ネットワークの公式サイトにリンクを張り、同会員向けに周知した。また、利活用基盤として、GPGPUサーバのスケジュラーサービスを開始し、AI初学者向けの深層学習実行アプリも開発した。2.AI × セキュリティの研究開発サイバーセキュリティ研究所との連携により、令和2年度は、以下の研究課題に取り組み多くの学術的成果を得るとともに、社会実装に向けたシステム開発や新たな課題としてWebセキュリティに関する研究に着手した。(1)IoTマルウェアの分析IoTマルウェアの分類及びその亜種特定技術を構築し、98%の精度を実現。IEEE TrustCom採録・Best Paper受賞。IEEE Open J. Computer Society採録。関数呼び出し順序をグラフ化し、特定の攻撃機能を表すシグネチャを生成。複数ファミリの機能を有する亜種の存在などを確認。ACM SAC採録。(2)攻撃の検知・脅威予測GlassoとNMFのそれぞれを用いたマルウェア活動検知エンジンを構築の上、評価。Glassoエンジン提案・評価についてはIEICE Transactionに採録。NMFエンジンの提案と両社の比較については現在IEEE TrustComに投稿中。また、マルウェアが更新される際に標的となる宛先ポート番号に語彙の類似性を有する傾向があることに着目し。マルウェア亜種の発生を迅速に検知する技術を検討した。その成果を論文発表し、CSS2020コンセプト研究賞受賞。(3)アラートスクリーニング技術大量のアラートから、重要度の高いもののみを抽出す図1AIデータテストベッド:データ公開用Webサイト3.10.5.2連携研究室室長  岩爪 道昭ほか6名AI研究開発プラットフォームの構築と連携研究プロジェクトの推進

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