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122■概要本研究センターは、平成23年の東日本大震災において発生した通信ネットワークの障害を教訓として、災害に強いICTの研究開発を産学官連携体制の下で、被災地に研究拠点を設置して実施することを目的に平成24年度に仙台市に設置された。平成28年からの第4期中長期目標期間では、災害に強いネットワーク技術開発とともに、成果の社会実装を促進し、併せて連携体制の強化、地域における拠点機能の強化を図ってきている。組織上はオープンイノベーション推進本部の中に位置付けられ、他の領域における成果の社会実装活動と連携しつつ成果の最大化を目指すとともに、平成29年4月からは東北ICT連携拠点として、地域連携強化やICTによる東北での問題解決のための連携活動も進めている。■主な記事1.研究室における活動と特筆すべき成果(1)基盤領域研究室災害に強い光ネットワーク技術として、今中長期計画では、災害時の光通信輻ふく輳そう回避を実現する弾力的光スイッチング基盤技術、光通信の応急復旧を行う暫定光ネットワーク構築の基盤技術の研究開発を行ってきている。弾力的光スイッチング基盤技術の研究開発時間軸/波長軸の弾力的な制御によりネットワーク設定変更時の変動耐性を高め、高速に輻輳緩和を実現する弾力的光スイッチングの研究開発を進めた。また、光統合ネットワークの光回線・光パケットサービスを異種トランスポート網に利用するために、制御管理層においてオープンなオーケストレーション制御技術の研究開発を行った。暫定光ネットワークの研究開発災害時に通信キャリアが連携して生残した通信設備資源等を相互利活用し、発災後の修復を促進するための研究開発と連携促進に向け、本年度は、第三者介在のキャリア間相互接続の自動制御管理を支援するプラットフォームを研究開発した。また、パス独占モデルでキャリア間相互接続時の故障を自動識別・管理する機能を開発し、実証実験を行った。日米連携JUNO2の研究開発JUNO2(平成30年~令和2年)「次世代メトロ光ネットワークの耐災害戦略」に関しては、エージェントを用いて、光信号品質の分析機能、優先度に基づく分析結果を網管理機構に通知する機能を含む超大規模光網制御管理機構の分析負荷をオフロードする方法、監視情報の分析に応じて素早く災害や故障時にパスの迂回再設定と故障点の隔離を含む制御を研究開発した。(2)応用領域研究室今中長期計画は、ワイヤレス通信応用プロジェクト(ネットワーク資源が限られた環境において情報流通の要件を確保するネットワーク利活用技術)と、リアルタイム社会知解析プロジェクト(SNS上の災害に関する社会知情報をリアルタイムに解析し分かりやすく提供することで必要な災害情報を得る技術)を推進してきている。①ワイヤレス通信応用プロジェクトの成果地域ネットワークの高度化技術の研究開発これまで開発してきた要素技術を分散型情報通信プラットフォームとして統合し、地理的に離れた複数の拠点間を結ぶ論理閉域網において分散型データ管理サービスを動作させることにより、閉域網内のデータに対してアクセス権を持つ利用者が、どこからでも安全に検索・閲覧できることを実証した。機動的ネットワーク構成技術の研究開発昨年度特許出願した分散認証基盤の開発を行うとともに、これまでに開発してきた要素技術と組み合わせて即応可能な無線ネットワークのシステムを構築し、高知県香南市において、公衆通信網が途絶した環境下でも情報共有可能であることを実証した。また、端末間連携技術として、端末のモビリティを考慮した実験とより正確な消費エネルギー測定を可能にするスマートフォン消費電力測定装置を開発した。②リアルタイム社会知解析プロジェクトの成果対災害SNS情報分析システムDディサーナISAANA、災害状況要約システムDディー-SサムUMMシステムのソフトウェアを民間企業(NEC)にビジネスライセンスし、7月からこれらのシステムを活用した自治体向けのサービスがNECにより開始された。また、システムの高度化として、深層学習のための学習データを更に整備し、災害に関する報告等を自動的に抽出するモデルを構築したほか、災害時等のリクエストが急増するような場合にシステムをスケールアウトさせるための3.10.6耐災害ICT研究センター研究センター長  鈴木 陽一

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