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126■概要大災害等によって引き起こされる広域光ネットワークでの深刻な輻ふく輳そう(ネットワークの混雑)に対して、既存の種々の対策で必要となる通信リソースを柔軟に割り当てるため、波長領域及び時間領域の動的な変更を可能とする弾力的なスイッチング方式の実証実験及び異種トランスポートネットワークのトラヒックの相互接続制御の研究開発を進めた。また、光ファイバ通信が断絶した被災地域近傍において迅速に、光ネットワークを応急復旧する際に、通信キャリア間の相互融通を促進するプラットフォーム技術の研究を行った。さらに、日米連携JUNO2プログラムに基づき、光ネットワークの障害情報を集約するテレメトリ機能の実証実験を行った。■令和2年度の成果1.弾力的光スイッチングの研究開発前中期計画において光パケットスイッチング方式で実証した輻輳緩和技術について、今中期計画においては商用化されている光通信経路(光パス)スイッチングを用いた輻輳緩和能力の向上を目標とした。冗長系を整備した光ネットワークでは輻輳緩和のため光パス切替/新規光パス設定を行うが、これに伴う光信号パワー変動を抑えるため一波長毎に数秒~数十秒以上の制御時間を要する。これに対して、時間軸/波長軸の弾力的な制御によりネットワーク設定変更時の変動耐性を高め、高速に輻輳緩和を実現する弾力的光スイッチングの研究開発を進めた。これまで、災害時の不安定なトラヒックでも安定に光増幅可能な「パワー急増緩和光増幅技術」や、高速に光パス切替/新規光パス設定可能な「多波長信号同時切替技術」、「波長多重光信号の高速等化技術」を個別に実証してきた。高速等化技術は、既に設置されている通信装置に簡単に追加接続し通信サービス開始を高速化することができ、光パスのサービス開始時に光信号が既定値に達するまで、従来技術では数秒要していたところ200 μ秒で設定値に制御する。図1には、これらの要素技術の統合により安定した通信を提供する「弾力的光スイッチング技術」を適用した光通信装置の概要を示す。また、フィールド環境における検証実験として、東京大手町–小金井市間に敷設されたJGNテストベッドを構成する商用通信装置1台に高速等化サブシステムを接続し、任意の波長信号を追加したときのクライアントサービス開始時間が、1,2,3ホップすべてのケースで10秒以上高速化されることを実証した。2.異種パケットトランスポート網間の相互接続 災害時に利用可能な資源を利活用し素早く復旧するために、今中期計画では、NICTがこれまでに開発してきた次世代の光パケット・パス統合ネットワーク(以下「光統合ネットワーク」という)と既存異種パケットトランスポート網間の相互接続の研究開発を行っている。前年度までに、光統合ネットワークを中核として災害時に分断された異種トランスポート網(既存MPLS網や広域イーサネットなど)を応急復旧的に繋つなげ・中継するために、データ層における異種プロトコル間の変換・相互接続技術及び制御管理層における異種網間のオーケストレーション制御技術を研究開発し、実証実験を行った。さらに、本年度は、光統合ネットワークの光回線・光パケットサービスを異種トランスポート網に利用するために、制御管理層においてオープンなオーケストレーション制御技術の研究開発を行った。図2に示すように、図1 弾力的光スイッチング技術を適用した光通信装置の概念図とフィールド実証被災した光ネットワーク光増幅部光信号分岐挿抜部光パワー高速等価部信号送受信部弾⼒的光スイッチング技術を適⽤した光通信装置⼊⼒光増幅部制御部出⼒目的︓災害時の障害迂回/光パス設⽴の高速化クライアント映像無線光通信装置輻輳災害データ張替新規設定13秒高速化0 204060801003hop時既存システムサブシステム接続01M2.M受信フレーム数/秒高速等化サブシステムのフィールド実証サブシステム既存装置への追加商用通信装置⼩⾦井大手町JGN1hop2hop3hopサービス開始の高速化を実証経過時間[秒]MPLS網制御機構オーケストレータ光パケット・パス統合ネットワーク(OPCI)広域イーサネットOpenFlow網等TAPIに適⽤したOPCI⽤YANG拡張異種トランスポート技術とOPCIと相互接続する装置TAPIに基づく異種トランスポートネットワーク制御OPCI-TransitためのTAPI拡張及びオーケストレーションプロトコル開発シームレスな融合プロトコル変換制御機構統合ネットワーク制御機構図2光統合ネットワークと異種トランスポートネットワークとの相互接続技術3.10.6.2基盤領域研究室室長(兼務)  淡路 祥成ほか1名光ネットワークのレジリエンシー高度化技術の研究開発

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