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130130リアルタイム社会知解析プロジェクト■概要応用領域研究室リアルタイム社会知解析プロジェクトでは、第4期中長期計画において、インターネット上の災害に関する社会知(社会に流布する膨大な情報や知識のビッグデータ)をリアルタイムに解析し、分かりやすく整理して提供するための基盤技術の研究開発に取り組んできた。この技術を実装したシステムを開発し、災害時により適切な意志決定が短時間で可能となる社会の実現に貢献する。NICT外の組織とも連携し、研究開発した技術の社会実装を進めてきた。■令和2年度の成果こうした技術を実装したシステムとして対災害SNS情報分析システムDディサーナISAANA、災害状況要約システムDディーサム-SUMMを開発し、DISAANAは2015年の4月より、D-SUMMは2016年の10月より試験公開を継続してきた。これらのシステムを活用した実証実験の実施、自治体等の訓練への参加、実災害時の活用といった活動を通して、システムの改良を実施し、継続的に社会実装に向けて取り組んできた。令和2年度に、これらのシステムのソフトウェアを民間企業(NEC)にビジネスライセンスした。7月からこれらのシステムを活用した自治体向けのサービスがNECにより開始された。システムの高度化という点では、D-SUMMに深層学習を導入するための準備を前年度から実施してきたが、令和2年度は、深層学習のための学習データをさらに整備し、後に述べるSIPのプロジェクトにて整備した学習データを用いてユニバーサルコミュニケーション研究所データ駆動知能システム研究センターにて作成したBERTと呼ばれる深層学習モデルをファインチューニングすることで災害に関する報告(以下、被災報告と呼ぶ)等を自動的に抽出するモデルを構築した。このモデルを用いる方法と現在公開しているD-SUMMと同様の抽出方法とを比較したところ、被災報告の抽出に関してF値とよぶ評価尺度で31%の性能向上を確認した。さらに、D-SUMMでこれらの深層学習モデルを用いるために必要となる関連ソフトウェア及びそこで用いる被災報告を抽出するための深層学習モデルを民間企業へビジネスライセンスした。こうした被災報告等を要約した結果を膨大な利用者に対しても提供できるように、D-SUMMの出力結果をまとめる仕組みにキャッシュ的機構を導入し、スケールアウトさせやすいように改修した。なお、ここで述べるD-SUMMは現在公開している版とは異なり、特定の都道府県あるいは市町村を指定すること無く、日本全国の要約結果をまとめて返すものである。このスケールアウトのための機構を導入したD-SUMMをクラウド上で稼働させ、令和元年度の台風19号時のツイートを用いて、評価実験を行った。その結果、サービスを提供するサーバ1台あたりで毎秒1,000〜1,600リクエストに対応可能で、サーバを5台まで増やした場合でも、リクエストへの対応可能数が線形に変化する(5台のサーバ全体では毎秒5,000件以上のリクエストに対応可能である)ことを確認した。これにより、災害時等のリクエストが急増するような場合に、システムをスケールアウトさせるための基盤技術を確立した。内閣府SIP第2期にて国立研究開発法人防災科学技術研究所、株式会社ウェザーニューズと共同でLINE株式会社、一般財団法人情報法制研究所の協力を得て防災チャットボットSソクダOCDAの研究開発を進めている。SOCDAでは、収集した情報を分析するためにDISAANA・D-SUMMの技術を活用している。今後の社会実装を加速するためにD-SUMMを中心として、SOCDAを実現する上で必要になるソフトウェアをSOCDAのチャットボットの主要機能を開発している民間企業(ウェザーニューズ)図1 岡山県倉敷市での訓練(令和2年6月)においてSOCDAにおいて収集した情報の集約結果例

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