1313 ●ソーシャルイノベーションユニットへビジネスライセンスした。これによりウェザーニューズが独自にSOCDAを活用したビジネスを展開することが容易になった。このライセンスを活用する形で、複数の自治体にて、SOCDAを活用する有償のトライアルが6月頃より開始された。また、上述したように被災報告等の抽出を深層学習により実施するための学習データを50万件整備した。今後はこれらの学習データを活用して作成した深層学習モデルを実環境にて運用し、検証、改善を図っていく予定である。こうしたSOCDAの対外的なアピールとしてオンラインCEATEC(SOCDAの動画をhttps://www.youtube.com/watch?v=vvxoMFgd5c8にて視聴可能)、けいはんなR&Dフェア、第25回「震災対策技術展」横浜(会場にて動態展示を実施)にて展示を行った。一方、SOCDAには、情報収集機能と避難支援機能の2つの主要な機能があり、これまで情報収集機能に関して一定程度の実証を行ってきたところである。令和2年度はもう一方の避難支援機能の研究開発を中心に取り組んだ。また、情報収集機能を用いた実証実験として令和2年6月に岡山県倉敷市にて「LINEを活用した高梁川・小田川防災訓練」を実施した。この訓練では地域住民を含む398名の参加者から270件あまりの投稿を集め(図1)、県下の複数の自治体にまたがる広域の情報収集を行うことができた。また、令和3年1月には神戸市にて昨年同様に市民向けのSOCDA(LINE公式アカウント「SIP-KOBE実証訓練」を利用)と消防団で活用しているSOCDAの両方でそれらを活用する訓練を実施した。市民向けのLINE公式アカウント「SIP-KOBE実証訓練」は友だち(登録者)が昨年から約3,000人増えておよそ1万3千人となっており、これらの人に向けて一斉に情報提供を呼びかけ、情報収集を実施する訓練を昨年同様に実施した。神戸市では、これらのアカウントを日常的に活用する実証実験を継続しており、定期的に打合せを行い、議論している。また、議論の中で指摘された点を改修し、システムをより使いやすくすることに継続的に取り組んできた。令和2年度は、災害対策本部等にて地図上でSOCDAが収集した情報を確認する際に、神戸市側の要望として一定時間ごとに自動更新する機能などを実装し訓練に臨んだところ、神戸市職員には好評であった。また、神戸市消防団での訓練においては、今年度実装された安否確認機能を用いて消防団員の安否の確認を行った(図2)。この長期にわたる神戸市消防団での取組が高く評価され、第3回日本オープンイノベーション大賞総務大臣賞を受賞した(「神戸市消防団スマート情報システム」の運用【消防団員によるAIを活用した災害時の情報共有と安全管理】)。さらに令和2年度では、SOCDAにおける避難支援機能の実装を行い、すでに検証も進んでいる情報収集機能とあわせた全国共通のLINE公式アカウント「AI防災支援システム」を準備した。令和2年2月には、このAI防災支援システムアカウントを全国に先駆けて活用した実証実験が神奈川県にて実施された。この実験では、全国で初めて基礎自治体をまたいで整備した避難所、避難場所、ハザードマップのデータベースの広域避難体制での活用等に関する検証がなされ、避難先の選択等において基礎自治体をまたぐ形でも支援できることを確認した。この実証実験の様子は、多数のマスコミの取材を受け、当日夕方のテレビニュースでも放映されるなど注目を集めた。今後は、この「AI防災支援システム」を全国で利用できるように公開し、情報収集、避難支援の両面において実用を通して様々な検証を行っていく予定である。図2 令和3年1月17日に実施された神戸市消防団での訓練における安否確認集計結果例3.10.6 耐災害ICT研究センター
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