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6に準拠した電子カルテの分散保管のシステムをそれぞれ実装し、社会実装に向けた実証実験に成功した。 また、光量子制御技術については、超高速量子もつれ光源で生成した光子の干渉性を向上するための時間フィルタ手法を新規開発し、世界最高レートとなる繰り返し周波数3.2 GHzにおいて2光子干渉の観測に成功した。②「新規ICTデバイス技術」では、縦型酸化ガリウム(Ga2O3)トランジスタの開発を引き続き進めるとともに、高周波Ga2O3トランジスタの開発を行った。また、水銀ランプに代わる新しい小型・低環境負荷光源としての深紫外LEDに関して、半導体エピタキシャル層構造の新規設計手法を提案し、結晶歪ひずみを意図的に導入することで、ピエゾ電界を局所的に制御し、キャリア注入効率(CIE)を劇的に向上させることに成功した。③「フロンティアICT領域技術」では、次世代無線通信の実現に向けた広帯域THz検出デバイスの開発において、EOポリマー膜の汎用的転写プロセス技術を世界で初めて開発し、グラウンド電極を有するEOポリマー導波路THz検出器を試作、100 GHz電磁波による直接変調を実証し、Beyond 5G / 6Gへ向けたToF(THz over Fiber)技術基盤を確立した。超高周波領域での通信・計測システムに適用可能な高安定光源の開発において、狭線幅・高安定テラヘルツ帯周波数コムの研究開発を進め、300 GHz超までのテラヘルツ波発生を可能にした。さらに、DNAをレールとする人工分子素子において、DNA回路構築のために必須なY字型に分岐した分子ソータの作成に成功、2種類の分子トランスポータが実際に振り分けられることを実証した。(6)研究成果を最大化する業務①「技術実証及び社会実証を可能とするテストベッド構築」では、超高速研究開発ネットワーク(JGN)、大規模エミュレーションテストベッド(StarBED)等のテストベッドを統合した、「NICT総合テストベッド」を構築・運用し、令和2年度は、171件(第四期中長期計画期間累計320件)のプロジェクトに利用された。また、次世代のネットワーク仮想化プログラミング言語を用いたオープンソースによるマルチテナントテストベッド環境を新たに構築・提供するなどの機能拡充を図った。②「オープンイノベーション創出に向けた取組の強化」では、新たな価値の創出や課題の解決に役立てるために、NICTの研究開発成果等を紹介するNICTシーズ集を改版した。NICTシーズ集は、NICT Webサイトに掲載され、令和2年度末には約3,390ダウンロード、令和元年6月の初版公開時からは約5,790ダウンロード(重複含む)となっている。また、NICTは、世界最大規模の国際学術機関「国際学術会議」(International Science Council; ISC。国際科学会議から2018年に改組)により「世界データシステム事業」(World Data System : WDS)の国際プログラムオフィス(WDS-IPO)として選定されており、WDS-IPOの業務及びオープンサイエンスの推進活動を実施した。さらに、コロナ禍におけるデータ利活用のための研究活動として、VR映像等を遠隔の複数の端末へ同時に配信・制御するシステムを開発し、教育分野で長期の中止を余儀なくされている体験活動を安全に補うために、教員や学芸員を対象としたフィジビリティ・スタディを実施して有用性の高さを実証した。③「耐災害 ICT の実現に向けた取組の推進」では、災害時の光通信輻輳回避を実現する弾力的光スイッチング基盤技術、光通信の応急復旧を行う暫定光ネットワーク構築の基盤技術の研究開発を引き続き実施した。また、ネットワーク資源が限られた環境において情報流通の要件を確保するネットワーク利活用技術として、分散認証基盤の開発を進め、即応可能な無線ネットワークのシステムを構築し、高知県香南市において、公衆通信網が途絶した環境下でも情報共有可能であることを実証した。さらに、対災害SNS情報分析システムDディサーナISAANA、災害状況要約システムDディーサム-SUMMのソフトウェアを民間企業にビジネスライセンスし、7 月からこれらのシステムを活用した自治体向けのサービスが民間企業により開始された。④「戦略的な標準化活動の推進」では、研究開発成果の国際標準化に資するため、今中長期目標期間における戦略的な標準化推進の基礎として重点分野や具体的な行動計画等を定めた「情報通信研究機構標準化アクションプラン」(平成29年3月策定)を、研究開発・標準化活動の進展や標準化機関の動向の変化等を踏まえて更新した。また、ワイヤレスネットワーク総合研究センターが進める工場のIoT化の加速を目指した無線システムの協調制御と安定化技術の標準化活動を強力に支援するため、民間企業等と協力して設立したフレキシブルファクトリパートナーアライアンス(FFPA)の活動を積極的に支援し、SRF無線プラットフォームに関するFFPA技術仕様への適合性試験のための試験仕様を完成し、製品認証プログラムの準備を進めた。

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