1353 ●ソーシャルイノベーションユニット定局や周辺エリアの観測データ、前駆物質データ(NOx, NMHC等)の追加収集や、予測モデルパラメータの調整(業務フローに合わせた予測時間の設定など)、予測結果の気象データに基づくスクリーニング処理の追加(温度24℃以上, 風速3 m/s未満など)等により、注意報発令レベルのOx予測で60% (24時間後)~92%(8時間以内) の予測精度を実現するとともに、Oxレベルが高くても発令が無いケースの予測を70%削減するなど、業務支援に即した性能改善を実現した。また、予測結果を可視化するWebアプリを作成し、自治体における環境大気常時監視業務における早期警戒(警戒解除)への有用性をアンケート調査により検証するとともに、環境モニタリング事業者への技術移転の検討を開始した。このように、実証パートナーのデータやノウハウを生かした共創型の応用開発による課題解決を実践することで、xDataプラットフォームを活用した利用者巻き込み型のアプリ開発を通じ、技術開発のパートナーシップからデータ連携による課題解決のパートナーシップへとフォーメーション構築を進化させた。また、環境問題意識の高いASEAN地域を対象に、xDataプラットフォーム上の環境品質予測分析モデルをカスタマイズし現地のスマートサービスで利活用する実証実験にも着手し、国際展開を推進した。ブルネイ工科大学(ブルネイ)では、ASEAN地域の煙霧データを独自に収集し、環境品質短期予測ベースモデルをxData Edgeでカスタマイズした煙霧越境汚染の環境品質予測モデルを開発し、低炭素社会に関する国際会議ICLCA 2020等で成果発表を行った。また、ベトナム ダラット市のスマートシティでは、ダラット大学や地元企業と共同で、情報ポータルに収集された環境、観光、交通に関するデータを連携させ、観光エリアの環境品質や交通公害リスク予測に応用し、現地のスマート観光サービス等での活用に向けた検討を行った。さらに、研究コミュニティを巻き込んだデータ連携分析技術の共創を推進すべく、xDataプラットフォーム上のデータセットを用いて、環境品質予測分析モデルのベンチマーキングを行う“Lifelogging for Wellbeing”タスクを、MediaEval国際ワークショップで令和2年7~12月に実施した。昨年度に続き2回目の開催となり、今回は、xDataプラットフォームに実装した個人環境品質予測手法を改善するタスクと、同じくライフログ画像から環境品質予測手法を改善するするタスクの2つを実施した。世界各国からから11チームの研究者ら参加し、改善手法の提案と性能評価を実施した。優秀な成果は、xDataプラットフォームにフィードバックする予定である。そのほかにも、データ連携分析をテーマとした国際ワークショップICDAR2020(ACM ICMR2020国際会議と併設)を企画・運営し、研究コミュニティへの拡大に向けた活動を展開した。一方、データ利活用からセンシングへのフィードバック手法として、ユーザが取得したカメラ画像等のマルチメディアデータから環境情報を生成する技術の開発を行った。画像による質問応答(VQA)で用いられるLXMERT方式を拡張し、画像ログと環境描写の相関検索エンジンを開発(ベトナム国家大学ホーチミン校との共同研究)した。Taxonomy(背景知識)と組み合わせることで、対象ドメインに特化した性能チューニングを可能にした。この相関検索エンジンを用いて、国際的な画像データ解析タスクImageCLEF2020に参加し、Lifelog Moment Retrievalタスクでは参加38チーム中2位、Sports Performance Lifelogタスクで参加12チーム中1位を獲得するなど、優れた成果を達成した。これを用いて、携帯型カメラで取得した周辺環境の画像ログから環境品質(AQI)を予測するImage-2-AQI手法を開発した。特性の異なる画像特徴量を複数組み合わせることで、ロバスト性を向上させ、70~80 %の予測精度を実現した。さらに、Image-2-AQI手法を実装したMM Sensingシステム をxData Edge上に開発し、ウォーキング団体と連携したフィールド実験(東京)で、幹線道路や河川沿い、住宅街など多様な環境下での環境品質データ収集の有効性を評価した。3.10.7 統合ビッグデータ研究センター
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