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140■概要NICT内外と連携して、テラヘルツ波を利用した100Gbps級の無線通信システムの実現を目指したデバイス技術や集積化技術、計測基盤技術等の研究開発を行う。また、テラヘルツ帯等の超高周波領域における通信等に必要不可欠である信号源や検出器等に関する基盤技術の研究開発を行う。これらの研究開発成果を基に、テラヘルツ帯における無線通信技術及びセンシング技術の実用化を目指した標準化活動の推進に貢献する。令和2年度は、テラヘルツ無線テストベッドや、テラヘルツスペクトラム計測のための基盤技術を重点課題として研究開発を推進し、研究開発成果を最大化するための業務として、ITU-RやIEEE802等のテラヘルツ国際標準化活動を推進した。■令和2年度の成果1.テラヘルツ無線テストベッド基盤技術100Gbps級のテラヘルツ通信技術実現のため、最先端光ファイバ通信技術を援用したテラヘルツ波信号発生技術の検証を行っている。超大容量テラヘルツ通信の実現にあたり、利用可能帯域が広いテラヘルツ帯といえども周波数利用効率の高い変復調方式の適用が肝要であるものの、信号源の有する位相雑音の影響により位相情報を用いる変復調方式の実現は難しい。加えて将来テラヘルツ無線の評価を行うテストベッド環境においては、発生されるテラヘルツ信号の周波数の拡大及びその可変性も重要である。令和2年度は、テラヘルツ帯での多値変復調を実現するための高精度信号源の開発と超小型アンテナによるテラヘルツ帯通信試験を実施した。前述のとおり、多値信号などの高度な変復調の実現には信号源の有する位相雑音の低減が必須であるが、マイクロ波帯信号源を周波数逓倍することによる位相雑音劣化(逓倍次数mの場合に20log mで位相雑音が劣化)が影響を与える。そこで発振回路に光回路を組み入れることで高いQ値と長い共振器長を実現する光電気発振技術を採用し、かつ、最先端光ファイバ通信デバイスを用いることで発振周波数100GHzを実現した。図1に光電気発振回路の概略図と得られた単側波帯位相雑音スペクトルを示す。高精度計測器による100GHz信号の位相雑音に比べ、オフセット周波数10〜100kHzにおいて10dB以上の位相雑音改善が得られた。本技術を基準信号として採用することでテラヘルツ帯送受信システムの高精度な評価が実現できると期待される。また、外部機関と共同で300GHz帯における波長(1mm)と同等程度のサイズを実現する誘電体超小型アンテナを開発し、その通信応用について評価した(図1)。一般的なホーンアンテナと同等程度の利得により17Gbps以上の通信が可能であることを示した。以上のことから、300GHz帯テラヘルツ通信における信号発生、受信、評価技術について基盤技術の確立がなされたといえる。2.テラヘルツスペクトラム計測基盤技術スペクトラム計測においては、電波法の定めるスプリアス特性を計測可能とするため、オクターブ(0.3-図1 (左)100 GHz光電気発振回路のブロック図と得られた位相雑音スペクトル、(右)超小型アンテナによる300 GHz帯17 Gbpsオンオフ変調伝送試験の様子とビット誤り率曲線3.10.8.1テラヘルツ連携研究室室長  関根 徳彦ほか12名テラヘルツ帯の有効利用による快適な社会の実現

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