1413 ●ソーシャルイノベーションユニット0.6THz)の超広帯域とする。この帯域を1台の計測装置で担いながら、これまでにない高速、高精度で、スペクトラム計測を可能にする基盤技術の確立を目指している。これを実現する方法のひとつとして、計測周波数帯域をいくつかの帯域に等分割するフィルタバンクを用いてマルチバンド化し、周波数コムを局部発振波とすることで、分割した周波数帯のそれぞれを同時に計測することを提案している。このための要素技術のうち、フィルタバンクについては平成28年度に400GHz帯において設計どおりに動作させることに成功した。フィルタバンクからの信号を中間周波数(IF)にダウンコンバートするIFアンプ集積型ミキサについて平成29年度に試作し、IF帯域の広帯域化に成功するなど設計指針を得た。平成30年度には高精度光周波数コムを利用したサブミリ波帯周波数コムの発生、令和元年度には開発したコンポーネントを用いてマルチバンドスペクトラム計測の原理確認実験に成功した。第4期中長期計画の最終年度となる令和2年度は、広帯域IF信号のスペクトラム計測の高速化を実施した。図2(a)に、高速アナログデジタルコンバータ(ADC)を用いた広帯域瞬時スペクトラム計測実証の実験系を示す。本実験では、フィルタバンクからの1チャンネル分を想定している。265-315GHz帯で100MHz間隔を有する周波数コム信号をホーンアンテナから入力し、局部発振周波数を315GHzとしたミキサにより、IF信号に周波数変換する。このIF信号を増幅後、高速ADCで瞬時計測を行う。使用したADCは32Gsps、1入力あたりの帯域幅は12.5GHz、有効ビット数は6.5の仕様である。増幅後のIF帯域は4-21GHz帯であり、17GHzの帯域幅があるため、IF信号を4-11.5GHz帯と10.5-21GHz帯に分け、それぞれをADCに入力することで、4-21GHz帯をカバーする。図2(b)に上記の100MHz間隔のサブミリ波帯コム信号を入力したときのIF出力結果を示す。従来の周波数掃引型スペクトラムアナライザと比較すると、およそ4桁の計測時間短縮に成功し、テラヘルツスペクトラムの広帯域高速計測技術の実現に向け、重要な実証結果を得た。3.国際標準化活動WRC-19の結果を受けて引き続きITU-Rでの活動を行い、以下の成果を得た。(1)2020年11月WP1A会合にレポートSM.2352の改定に向けた作業文書改定案の入力を行い、改定作業文書を次会合にキャリーフォワードした。(2)2020年7月WP5A会合に新レポートM.[252-296GHZ.LMS.FS.COEXIST]に向けた作業文書の作業計画を提案し、さらに11月の会合に新レポート案の骨子案を入力し、作業文書として次会合にキャリーフォワードした。(3)2020年11月WP5C会合にレポートF.2416のアンテナパターンを改定する作業文書案を入力し、作業文書として次会合にキャリーフォワードするとともに、追加したアンテナパターンは勧告F.699の改定にも貢献した。(4)2020年9月及び2021年3月のAWG会合において、252-296 GHz帯固定システムに関するAPTレポートの作業文書案及びウクォークスルーイメージングシステムに関するAPTレポートの作業文書案を入力し、2件の作業文書を次会合にキャリーフォワードした。また、無線機器の標準化を進めている IEEE(The Institute of Electrical and Electronic Engineers)802標準委員会においては、短距離WPAN(Wireless Personal Area Network)システムで初めての300GHz帯無線標準規格であるIEEE std 802.15.3dが平成29年10月に出版されたが、ITU-R WRC-19で追加された新脚注5.564Aの周波数帯域に合わせた修正検討を開始した。また、引き続き無線標定などを含めた将来的なテラヘルツ無線機器規格について意見交換が行われている。令和2年11月からは、担当グループであるTechnical Advisory Group Terahertz (TAG THz)が改組されて、Standing Committee Terahertz(SC THz)となり、テラヘルツ研究センター長の寳迫 巌が引き続き同Committeeの副議長として参画している。ITU-Rの該当Working Partyとの連携を取りつつ、IEEE std 802.15.3dの周波数テーブルの修正等を行う予定である。図2 (a) 高速アナログデジタルコンバータ(ADC)を用いた広帯域瞬時スペクトラム計測実証の実験系、(b) 100 MHz間隔のサブミリ波帯コム信号を入力したときのIF出力結果(a) (b) 3.10.8 テラヘルツ研究センター
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