HTML5 Webook
28/344

20■概要突発的に発生する大気現象の早期捕捉や地震等の災害発生時の状況把握を可能とするリモートセンシング技術、グローバルな気候・気象の監視や予測精度の向上に必要な衛星リモートセンシング技術の研究開発に取り組み、安心・安全な社会の実現に貢献する。リモートセンシング技術の研究開発においては、フェーズドアレイ気象レーダー(降水の観測)に加え、風、水蒸気、雲等を高時間空間分解能で地上から観測する技術(地上レーダー)の研究開発を行い、これらの融合観測によりゲリラ豪雨・竜巻に代表される突発的に発生する極端現象の早期捕捉や発達のメカニズムの解明など、予測技術向上に必要な研究開発を行う。また、地震・火山噴火等の災害発生時の状況把握等に必要な技術として、航空機搭載合成開口レーダー(航空機SAR)について、構造物や地表面の変化抽出等の状況を判読するために必要な技術の研究開発に取り組むとともに、観測データの利活用を促進する。さらに、世界最高水準の画質(空間分解能等)の実現を目指した、レーダー機器の性能向上のための研究開発を進める。衛星リモートセンシング技術の開発においては、グローバルな気候・気象の監視や予測精度の向上を目指し、地球規模での降水・雲・風等の大気環境の観測を実現するための衛星搭載型リモートセンシング技術及び観測で得られたデータを利用した降水・雲等に関する物理量を推定する高度解析技術の研究開発を行う。■令和2年度の成果1.地上レーダー二重偏波化されたフェーズドアレイ気象レーダー(マルチパラメータ・フェーズドアレイ気象レーダー:MP-PAWR)に関し、他機関との密接な連携により首都圏豪雨予測システムによる大規模イベントに向けた実証試験及び自治体との実証試験を行った。また、AIP加速課題(JST)「ビックデータ同化とAIによるリアルタム気象予測の新展開(平成31年〜令和3年度)」において理化学研究所と協力し、スーパーコンピュータOakforest-PACS(筑波大と東大が共同で運営する最先端共同HPC基盤施設)を用いて、MP-PAWRのリアルタイムデータによるゲリラ豪雨予測実験を夏期に実施した。地上デジタル放送波を利用した水蒸気量の観測網の展開のため、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期国家レジリエンス(防災・減災)の強化「V.線状降水帯の早期発生及び発達予測情報の高度化と利活用に関する研究」において、日本アンテナ株式会社と協力し、関東域において観測実験を継続した。また復号処理をソフトウェアからハードウェア化し、省電力・安定化された新しい受信機器の九州地方への設置を開始した。豪雨の高精度予測を可能にする水蒸気観測の実現に向け、高出力パルスレーザの発振波長を広範囲に渡って長期間安定して制御する手法の開発に成功した。2 μm帯高出力パルスレーザ技術とCO2差分吸収ライダー技術を活用した地上設置型水蒸気・風ライダーが完成し、ラジオゾンデによる同期観測を実施し、水蒸気観測性能の検証を実施し、目標精度の湿度±10%を達成した(図1)。次世代ウィンドプロファイラにおけるアダプティブクラッタ抑圧システム(ACS)の開発については、気北6号館⽔⽔蒸蒸気気ラライイダダーー@@66号号館館屋屋上上ララジジオオゾゾンンデデ@@本本部部北北側側敷敷地地測測定定フフィィーールルドドかからら放放球球ラジオゾンデから算出⽔蒸気DIAL観測から算出2020/06/29 16:44⽔蒸気ライダーのラジオゾンデによる同期観測実験の様⼦⽔蒸気ライダーとラジオゾンデ観測より算出した絶対湿度での⽐較(2020/06/20) 全期間での⽐較図1 水蒸気ライダーのラジオゾンデによる同期観測実験による性能評価3.1.1リモートセンシング研究室室長  中川 勝広ほか23名安心・安全な社会を実現するためのリモートセンシング手法の創出

元のページ  ../index.html#28

このブックを見る