I理事長挨拶徳田 英幸情報通信研究機構(NICT)は、ICTを専門とする我が国で唯一の国立研究開発法人として、未来社会も見据えた世界最先端技術の研究開発へのチャレンジと、その社会展開のためのコラボレーションやオープンイノベーションの推進を一体的に進めております。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は世界中に拡大し、現在も社会経済に大きな影響を与えています。今後は、感染症への対策を取りつつ社会経済活動も行う、ニューノーマル社会への適応を加速していく必要があります。ニューノーマル時代には、テレワーク、オンライン授業、オンライン診療など多様な分野でのICTの活用が必要不可欠になっています。令和2年度は、第4期中長期目標・計画(平成28~令和2年度)の最終年度に当たります。第4期中長期計画では、キーコンセプト『COC』(Collaboration, Open Mind/Open Innovation, Challenger’s spirit)の下、①センシング基盤分野、②統合ICT基盤分野、③データ利活用基盤分野、④サイバーセキュリティ分野及び⑤フロンティア研究分野を5つの柱として、基礎的・基盤的な研究開発を推進するとともに、NICT内外とも連携し、社会課題の解決や新たな価値の創出に向けた取組を推進してまいりました。最終年度である令和2年度は、上記の各分野において、今中長期の集大成ともいえる顕著な成果を上げています。特に、新型マルチコア光ファイバによる大容量通信、Beyond 5G(ビヨンド5G)に向けたワイヤレス通信、サイバーセキュリティ・プライバシー保護技術、脳情報通信、量子情報通信、新規ICTデバイスなどにおいて世界をリードする優れた技術が創出されました。また、こうした取組を海外とも協調して進めるため、欧米、ASEAN諸国等との国際共同研究や国際標準化などを進めました。さらに、オープンイノベーション推進の取組として、研究機関・企業・大学・地方自治体等と共同研究・実証プロジェクトを進めるとともに、NICTが開発した先端技術を企業等に活用いただく活動、研究成果データのオープンな利用に向けた環境整備を進め、多言語音声翻訳技術や宇宙天気予報など、NICTの研究開発成果の社会展開が進展しました。また、人材育成にも力を入れており、若年層のICT人材を対象に、セキュリティイノベーター育成を目的とした人材育成プログラム「SecHack365」や、量子ICTの研究開発に携わる人材不足を解消するため、オールジャパン体制で「量子ネイティブ」の育成を目指した、量子ICT人材育成プログラム「NICT Quantum Camp」を実施しました。NICTでは、令和3年4月から新しい5か年の第5期中長期目標・計画期間が始まりました。第5期では第4期の5つの柱に、AI、Beyond 5G、量子情報通信及びサイバーセキュリティを戦略的に進めるべき研究4領域を加え、Society 5.0の実現及びSDGsの達成に向けて、広く皆様と協力させていただきながら、研究開発とその成果の最大化に向けた取組を進めてまいります。本年報を、NICTをご理解いただく一助として、更には、NICTとの一層の連携推進にご活用いただければ幸いです。今後とも変わらぬご支援、ご協力を賜りますようお願い申し上げます。
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