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22■概要当研究室では、主に太陽を起源とする放射線や高エネルギー粒子、磁気圏及び電離圏のじょう乱などの宇宙天気現象を監視し、宇宙天気予報を毎日提供するとともに、その精度向上を目的とした研究開発を行っている。電波伝搬に大きな影響を与える電離圏等のじょう乱の状態をより正確に把握する宇宙環境計測及び高精度予測のための基盤技術の研究開発を行うとともに、航空機の運用等での電波インフラの安定利用に貢献するシステムの構築に向けた研究開発を行い、研究開発成果を電波の伝わり方の観測等の業務に反映する。また、人工衛星の安定運用に不可欠な宇宙環境の把握・予測に貢献するため、太陽風データを入力とする高性能磁気圏シミュレータの研究開発を進めるとともに、衛星観測データによる放射線帯予測モデルの高精度化技術の研究開発を行う。さらに、太陽電波観測・太陽風シミュレーションによる高精度早期警報システムの実現に向けて、太陽風のじょう乱の到来を予測するために必要な太陽活動モニタリングのための電波観測システム及び衛星観測データを活用した太陽風伝搬モデルに関する技術の研究開発を行う。また、今後必ず発生すると考えられる激甚宇宙災害に対する対策として、通信・放送・測位及び電力網や人工衛星の運用などが極端現象により、どこにどのくらいの影響を受ける可能性があり、その結果として社会システムの損失・損害がどの程度になる可能性があるのかを具体的・定量的に把握するための研究を進めている。国際民間航空機関(ICAO)において宇宙天気情報を民間航空運用に用いるための準備が進められてきた。日本は豪州・カナダ・フランスと共にACFJコンソーシアムを構築し、ICAOグローバルセンターに選出され、令和元年11月よりサービスが開始された。また令和元年12月からは、電波利用料を財源として宇宙天気状況監視の24時間運用を開始した。この例をはじめ、宇宙天気情報が実社会で利用される状況が進んでおり、宇宙災害の社会影響の定量的な把握とリアルタイムモニタリング及び精度の高い予測情報の提供を行うことが求められているといえる。■令和2年度の成果1.研究活動・AI技術によるデータ自動抽出・予測技術開発を推進。イオノグラムのデータ自動抽出は、読み取り率80%から99%、誤差0.26 MHzから0.12 MHzへ向上、運用システムに実装した。・タイ・チュンポンに設置されたVHFレーダーの観測データを解析し、プラズマバブルのエコーの検出に成功した。観測データの可視化システムを構築した。・電波伝搬シミュレータ(HF-START)について、電波伝搬時間観測によるシミュレーションの検証を実施。電離圏リアルタイムトモグラフィーと結合することによるリアルタイム可視化のウェブサービスを公開した。・大気電離圏モデル(GAIA)をメジャーアップデート(化学反応等計算の精緻化、高速化など)、性能評価を実施。データ同化アルゴリズムを実装、電離圏観測データ(全球TEC)の導入実験を実施した。またGAIAリアルタイム可視化を進め、宇宙天気予報業務での試行を開始した(図1)。・人工衛星搭載を目指し、衛星搭載用粒子計測器の概念設計や紫外線イメージャー用光学レンズの製作を行った。図1GAIAモデルを用いたデータ同化プロトタイプシステムを構築し、世界各地のGNSS-TECデータを用いて同化するプロセスが稼働することを確認した。3.1.2宇宙環境研究室室長  石井 守ほか25名宇宙環境監視の24時間運用を本格始動

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