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24■概要正確な時刻と周波数は、情報通信システムの維持・発展を支えるとともに、精密物理計測の基盤となっている。時空標準研究室では、標準時及び周波数標準の更なる高精度化、高信頼化を目指して、日本標準時やそこから得られる標準周波数の実利用技術の開発、光周波数標準の開発及びその評価や展開に不可欠な比較・伝送技術の開発を行う。令和2年度は第4期中長期計画の最終年であり、日本標準時や神戸副局での安定した定常運用及び耐災害性の向上、鹿島34 mアンテナの最後の成果となるVLBI周波数比較やかにパルサーのX線増強観測等の高インパクトファクター誌での論文化、光周波数標準測定結果の時間周波数諮問委員会への貢献、広帯域THz周波数カウンター等の成果を得た。また、周波数標準の利活用技術として、無線双方向技術及びチップスケール原子時計の開発を進めた。■令和2年度の成果1.標準時及び周波数標準の発生と供給に関する業務日本標準時の発生では、協定世界時との20 ns以内の時刻差を安定に維持した。標準時分散化システムの構築では、平成30年度に開局した日本標準時神戸副局で発生させた時系は年間を通して日本標準時に対して10 ns以内の同期精度を維持しており、副局の時系として長期間安定かつ精度よく維持できていることを確認した。さらに標準時非常時対応マニュアルを拡充し、災害を想定した神戸副局ヘの標準時マスタ局の切替訓練を実施した。日本標準時の供給に関して、標準電波の送信については、本サービス全体としての送信時間率が99.99%以上(年度全体)で安定運用できた。公開NTPサービスでは1日あたり40億を超えるアクセス数が続いており、令和2年3月からは神戸副局からの運用を開始した。また、アナログ電話回線による時刻供給(テレホンJJY)のアクセスが月間12万アクセスへ減少した一方、平成31年2月に正式運用を開始した「光電話回線による時刻供給(光テレホンJJY)」は、登録回線数が180局を超えるとともに、月間アクセス数も6万件を超え、アナログ回線から光回線へのサービス移行が進んだ(図1)。加えて情報通信研究機構法に基づき実施している周波数校正業務に関して、大幅改定された国際規格ISO/IEC17025:2017が要求する事項を満たす事業者である旨を示す認定を取得した。国際活動においては、原子時計データを継続して国際度量衡局に提供して世界の標準時構築に貢献するとともに、ITU-R SG7に日本代表として参加した。2.次世代周波数標準器の研究開発光周波数標準では、国際原子時や日本標準時の定常的な歩度校正に耐えられるようなシステム構築を視野に開発を進めた。また、ストロンチウム(Sr)光格子時計では、国際度量衡局に提供した過去4年間のNICT光格子時計による国際原子時の校正データと、同時期に国際原子時校正に寄与した8台の一次周波数標準の校正データを突き合わせることで時計遷移の絶対周波数を不確かさ1.8×10-16で評価して論文発表した(図2)。一方、インジウムイオン(In+)光周波数標準では、系統不確かさの評価の改善によって10-16台での計測が可能となり、これを基にNICT内でのSr光格子時計との図1光テレホンJJYの月間アクセス数(棒グラフ)と登録局数(黒線)図2国際度量衡委員会2017年推奨値に対するNICTのSr光格子時計の周波数差3.1.3時空標準研究室室長  井戸 哲也ほか32名高精度な周波数と時刻を生成・維持、そして供給する技術の開発

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