HTML5 Webook
34/344

26■概要電磁環境研究室では、将来の電波利用の多様化に対して安心・安全な電波環境を構築するため、機器やシステム等が互いに電磁的悪影響を受けず・与えずに動作する能力である電磁的両立性(Electromagnetic Compatibility(EMC))の研究開発を行っている。令和2年度は、第4期中長期計画の各課題について下記の研究開発を行った。先端EMC計測技術に関して、省エネ電気機器等から発生する電磁雑音が近傍の医療機器や電子機器に与える電磁干渉についての検討、新国際規格に準拠した近接電磁耐性評価用広帯域アンテナの市販製品版の開発と更なる改良についての検討、レーダー等から発射される広帯域な周波数成分を含む不要波(スプリアス)に対する高速スペクトル測定装置の開発、家電機器等からの周波数30 MHz 以下の放射妨害波(空間に放射され、通信を妨害する電磁雑音)に対する測定法及び測定場についての検討、5G等におけるミリ波伝搬特性改善のためのメタマテリアル電波散乱壁についての検討を行った。また、超高周波電磁波に対する較正技術やLTE等の広帯域変調信号波形に対する電界プローブの較正手法の検討と船舶用レーダー等からの広帯域不要波測定場の大地反射特性改良について検討を行った。生体EMC技術に関して、テラヘルツ帯(100GHz~10THz)まで人体の電波ばく露評価技術を開発するために、サブミリ波帯(300 GHz以上)までの電気定数データベースの構築、テラヘルツ帯における生体組織との相互作用メカニズムの検討、マルチスケールばく露評価の微細構造組織モデル化とばく露数値シミュレーションについての検討を行った。また、最新・次世代電波利用システムの適合性評価技術を開発するために、5G システム用携帯無線端末等の適合性評価の不確かさ評価、中間周波数帯WPT (Wireless Power Transmission:ワイヤレス電力伝送)システムの適合性評価手法の検証と改良についての検討、マイクロ波帯WPT システムの適合性評価 方法の開発についての検討を行った。さらに、日常生活における電波環境を網羅的に明らかにするために電波ばく露レベルモニタリングデータの取得・蓄積・活用について取組を進めた。研究連携と国内外技術基準への寄与に関して、大学・研究機関等との研究ネットワーク構築や共同研究実施、協力研究員の受け入れ等により、電磁環境技術に関する我が国の中核的研究機関としての役割を果たすとともに、研究開発で得られた知見や経験を、ITU(国際電気通信連合)、IEC(国際電気標準会議) 等の国際標準化活動や国内外技術基準の策定等に寄与した。■令和2年度の成果1.先端EMC計測技術複数の省エネ電気機器(LED電球)から発生する広帯域電磁雑音について、測定系を整備し、測定を行うことにより、電磁雑音発生メカニズムを検討し、LED電球の個数増加と電磁雑音のスペクトラム増加が線形関係にならないことを確認した。さらに、電球の種類や設置位置の変化に対する電磁雑音波形の変動を調べ、その要因を検討した(図1)。LTEで用いられる広帯域変調信号波形に対する電界プローブの応答特性を詳細に解明し、較正手法に関する研究について検討した成果がIEEE論文誌に採録された。これによりLTE / 5G等の広帯域変調信号の測定の不確かさを低減し、適合性評価の信頼性を向上するとともに、不確かさに対する適合性評価のペナルティを小さくすることが可能になり、より効率的な電波利用を可能とした。船舶用レーダー等の広帯域スプリアスに関する性能試験では広大な測定場が必要であり、国際規格に準拠した測定場はこれまでに英国に1か所のみであった。そこで、アジア初の我が国におけるレーダースプリアス測定場構築に向けて、広帯域スプリアス測定場における多重波伝図1LED電球からの電磁雑音の測定の様子。電波暗室内でLED電球に給電している電源ライン上を伝導する電磁雑音を3軸走査システムで保持されたループセンサにより測定した。電電源源ラライインンLLEEDD電電球球ルルーーププセセンンササ33軸軸走走査査シシスステテムム3.1.4電磁環境研究室室長  渡邊 聡一ほか32名最新の電波利用に対応した電磁環境構築のための研究開発と業務

元のページ  ../index.html#34

このブックを見る