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27播(マルチパス)対策として電波吸収体による反射波防止板を多重に配置する構成を検討し、その効果を評価した(図2)。反射波防止板を多重化することで、受信アンテナ高を変化させた際の受信信号強度の変動を国際基準の3 dB以内のpeak to peak 2.3 dBに抑えることを可能とした。これにより、世界的シェアを有する我が国の船舶用レーダーメーカーの国際競争力を更に向上した。 5Gで利用されるミリ波帯(30 GHz~300 GHz)の電波は、光のように直進性が強くなる、かつ、減衰が大きくなるため、送受信機の距離が近いにも関わらず、電波が届かない不感地帯が生じる。この不感地帯を解消するために、到来した電波を、あらゆる方向へ散乱させる壁面を開発した。アレイアンテナ理論を使った簡易設計法を考案、周期構造、メタマテリアル構造を採用した壁面を高速に設計し、数値シミュレーションにより、その有効性を示した。2.生体EMC技術Beyond 5G / 6Gでの利用が想定されているテラヘルツ帯のばく露評価技術を検討するために、テラヘルツ時間領域分光システムを用いた角膜のリアルタイム誘電特性評価法を確立し、角膜の誘電特性をリアルタイムに評価することで、高強度テラヘルツ帯電波ばく露による誘電特性の変化と眼細胞に障害を生じる温度との関係を明らかにし、テラヘルツ帯電波と生体組織との相互作用メカニズムの検証を実施した(図3)。kHz~MHzの周波数帯の大電力WPTシステム等の適合性評価に関する実証データを取得し、適合性評価手法の確認及び改良を実施した。また、より高い周波数帯でビーム状の電波を利用したWPTシステムの屋内での利用を想定し、ビームの向きや鋭さ、壁による反射を考慮した評価法の提案及び検証を行い、適合性評価手法の確認及び改良を実施した。日常生活における電波環境を網羅的に明確にするために、過去に実施したことがある場所(屋内外)における携帯電話基地局周辺の電波環境の測定を行い、我が国で初めて過去からの電波環境の違い(周波数帯や基地局数の増加によらず同レベル)を定量的に明確化するとともに、市街地及び郊外における基地局周辺電波強度の空間分布の統計量を評価した(図4)。3.研究連携と国内外技術基準への寄与大学・研究機関等との共同研究や協力研究員の受入れなどによる研究ネットワーク構築、NICT/EMC-net(EMCに関して主に産業界からの要望の取得と議論を行う場として設置したオープンフォーラム)などの活動などを通じて、電磁環境技術に関する我が国の中核的研究機関として役割を果たした。研究開発で得られた知見や経験に基づき、下記に示すとおりITU、IEC、ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)等の国際標準化及び国内外技術基準の策定に対して大きく貢献した(人数はいずれも延べ)。・国際会議エキスパート・構成員64名、国際寄与文書提出6編、機構寄与を含む国際規格等の成立11編など。・国内標準化会議構成員73名(うち議長・副議長11名)、文書提出7編、国内答申1編(「空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」のうち「構内における空間伝送型ワイヤレス電力伝送システムの技術的条件」に関する一部答申)など。図2英国に次ぐ世界で2か所目となる国際規格に準拠した広帯域スプリアス測定場(上図)を構築した。図3テラヘルツ時間領域分光システムを用いた家か兎と角膜のリアルタイム誘電特性評価法を確立した(左図)。リアルタイム計測のためのテラヘルツ波による角膜の平面イメージ(右図)を取得した。図4屋内外における携帯電話基地局周辺の電波環境の測定を行い、市街地及び郊外における基地局周辺電波強度の空間分布の統計量(グラフでは10, 50, 90パーセンタイル値)を評価した。3.1 電磁波研究所3観みる●センシング基盤分野

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