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32■概要ネットワークシステム研究所では、世界最先端のICTにより新たな価値創造や社会システムの変革をもたらすために、「社会を繋つなぐ」能力として、通信量の爆発的増加や通信品質・利用環境の多様化等に対応するための基礎的・基盤的研究を行っている。フォトニックネットワークシステム研究室では、現在の1,000倍以上の通信トラヒックに対応する「超大容量マルチコアネットワークシステム技術」と、急激なトラヒック変動や通信サービスの多様化へ柔軟に対応可能な「光統合ネットワーク技術」の研究開発を行う。さらに、伝送容量、伝送距離、収容ユーザ数及び電力効率性が世界最高水準の光アクセスネットワークを実現する基礎技術を確立する。ネットワーク基盤研究室では、革新的なネットワークの実現に不可欠なアーキテクチャ及び基礎技術の高度化を先導するため、ネットワーク制御の完全自動化を目指した「ネットワーク構築制御自動化技術」及びネットワーク上を流通する情報に着目した情報指向型のアーキテクチャ確立を目指した「新たな識別子に基づく情報流通基盤技術」の研究を行う。また、第5世代モバイル通信システム(5G)より大量の通信トラヒックを収容可能な光アクセス基盤実現のため、光アクセスから光コアまでをシームレスにつなぐ「光アクセス・光コア融合ネットワーク技術」及びエンドユーザへの大容量通信を支える「アクセス系に係る光基盤技術」の研究開発を行う■主な記事1.特筆すべき研究成果(1)マルチモード光ファイバによる毎秒1ペタビット伝送成功フォトニックネットワークシステム研究室は、シングルコア・15モード光ファイバを用い、世界で初めて毎秒1ペタビット超伝送実験に成功した(図1)。本成果は、令和2年12月6~10日にオンラインで開催されたヨーロッパ光通信国際会議 (ECOC:European Conference on Optical Communi-cation)2020において、高い評価を得てポストデッドライン(Postdeadline:特別設定の締切りを設けた、世界最高峰の成果が競合する国際会議内での最難関セッション)論文に選出された。当研究室は平成29年9月からの3年間に、光通信分野・ネットワーク分野の二大国際会議(ECOCと光ファイバ通信国際会議(OFC:Opti-cal Fiber Communication Conference))において、7回連続ポストデッドライン論文に選出される快挙を成し遂げている。(2)光・電波カスケード伝送の動作実証成功ネットワーク基盤研究室は、独自に開発した集積型受光素子で空間伝送された光信号を受光し、電波として送信するカスケード伝送の動作実証に成功した(図2)。本論文は、ECOC2020において高い評価を得てハイスコア論文に選出された。また、当研究室は集積型受光素子と位相回復信号処理を用いた新たな光コヒーレント受信方式の研究開発も進めており、ECOC2020等で特別セッションが開かれる等、世界的に注目を集めている。(3)オンライン授業システム実証実験ネットワーク基盤研究室は、大容量コンテンツを効率的に収集・配信する技術として情報・コンテンツ指向型ネットワーク技術の研究を進め、ソフトウェアプラットフォームCeforeを開発しオープンソフトとして公開している。令和2年度は、Ceforeの活用が期待できるオンライン授業システムを試作し、共同研究機関のキャンパス内に実験環境を構築し検証を行い(図3)、低遅延・高画質通信を確認した。今後は、更なる品質向上に向けて、ネットワーク機器の高度化等も行い、ニューノーマル時代に貢献するネットワーク技術の研究開発を進める。00.20.40.60.811.201020304050伝送容量(ペタbps)モード数2.5倍[2019][2018][2018]今回の成果図1今回の成果とこれまで報告されたマルチモード光ファイバの伝送容量光・電波アンテナ空間光無線集積型受光素子図2 光・電波カスケード伝送実験システム3.2ネットワークシステム研究所研究所長  浜口 清

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