48■概要本研究所は真に人との親和性の高いコミュニケーション技術や知的機能を持つ先端技術により、国民生活の利便性の向上や豊かで安心な社会の構築等に貢献することを目指した研究開発をする。具体的には社会に流布している膨大な情報や知識のビッグデータ(社会知)を情報源として、有用な質問の自動生成やその回答の自動提供等を行うことにより、非専門家でも専門的知識に容易にアクセスすることを可能とし、かつ、利用者の意思決定において有用な知識を提供するための技術を研究開発する。このような社会知解析技術の有効活用を目指し、Web上における大量の知識を活用し、単に健康状態チェックに関する対話だけでなく、幅広い話題に関する雑談を行えるマルチモーダル音声対話システムMミクサスICSUSを研究開発している。さらに、インターネット上に展開される災害に関する社会知について、各種の観測情報と共にリアルタイムに分かりやすく整理して利用者に提供するための基盤技術を耐災害ICT研究センターと共同で研究開発し、民間企業による商用展開が開始された。また、各種の社会システムの最適化・効率化を実現するため、高度な状況認識や行動支援を可能にするための画像解析技術を研究開発した。これらの技術により、人と社会にやさしいコミュニケーションの実現及び生活や福祉等に役立つ新しいICTの創出を目指す。■主な記事1.高齢者介護を目的とした音声対話技術の研究開発内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)(第二期)「ビッグデータ・AIを活用したサイバー空間基盤技術」の支援の下、KDDI株式会社、NECソリューションイノベータ株式会社、株式会社日本総合研究所と共同でマルチモーダル音声対話システムMICSUSの開発を推進している。MICSUSは近年非常に大きな社会課題と認識されている高齢者介護の負担軽減を狙ったものである。また、今年度は、特に、平成27年より深層学習を使わないバージョンを試験公開してきたWISDOM Xを深層学習を用いたバージョンへとアップグレードし、公開を開始したが、このWISDOM XはMICSUSでも雑談的対話を行うために使われている。2.防災チャットボットSソクダOCDAによる大規模防災実証実験内閣府SIP第二期「国家レジリエンス(防災・減災)の強化」の支援の下、(国研)防災科学技術研究所、株式会社ウェザーニューズ、LINE株式会社と連携し、NICT 耐災害ICT研究センターと共同で、被災情報をLINE上での対話を介して収集する防災チャットボットSOCDAの開発も推進し、これまでに開発した対災害情報分析システムDディサーナISAANA、Dディーサム-SUMMと合わせて、社会実装に向けた活動を行い、実際に民間企業による商用展開も開始された。3.画像解析技術の研究開発平成28年度から開始した画像解析技術の研究開発においては、観光支援と災害対策支援を念頭に置いて、画像状況コーパスの構築技術の研究と画像状況を記述する技術の研究開発を推進した。令和2年度は、観光画像コーパス構築技術の一つとして、画像セット中に高頻度に出現する建造物の位置を推定する手法の研究に取り組んだ。加えて、空撮された災害発生地域の地上画像を用いて、災害種別を識別する米国国立標準技術研究所(NIST)主催の技術評価(TRECVIDのDSDIタスク)に挑戦し、国立情報学研究所及び株式会社日立製作所と互いの識別結果を持ち寄りフュージョンすることで、トップレベルの識別精度を達成した。また、集積した画像ビックデータ及び記述した画像状況の情報を効果的に利用者が図1 けいはんなR&Dフェアオンライン開催模様(鳥澤NICTフェローによる技術講演)3.4ユニバーサルコミュニケーション研究所研究所長 内元 清貴
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