54■概要脳情報通信融合研究センター(CiNet:シーネット)は、脳情報科学と情報通信の融合研究を行う組織として、NICT、大阪大学、国際電気通信基礎技術研究所(ATR)を中核に、他の大学・研究機関や企業とも連携した融合研究を推進している。CiNetでは、脳情報通信融合研究室、脳機能解析研究室、脳情報工学研究室の3研究室体制で研究を行っている。第4期中長期計画においては、生活の向上や福祉等に役立つ新しいICTを創出するため、情報の送受信源である人間の脳で行われている認知や感覚・運動に関する活動を計測し、得られた脳情報をデコーディングやエンコーディングに効率的に活用する技術の確立を目指している。このため、高次脳型情報処理技術を解析し、これを応用し情報処理アーキテクチャ設計やバイオマーカ発見等を行うとともに、個々人の運動能力、感覚能力、社会的活動能力を向上させる技術の研究開発を推進している。また、脳情報に基づく快適性や安全性評価の基盤研究を行うとともに、多感覚の変動による人の反応や脳情報変化のデータを基にした人間の情動や認知の変化を推定する基盤技術研究開発を進めている。さらに、これらの研究開発の基盤となる脳計測技術の高度化を図るとともに、実生活で利用可能な小型計測装置等の開発も進めている。この計測技術から生まれた膨大な脳機能データを統合・共有・分析し、統合的な脳情報データ解析の実現を目指している。これらの研究開発を進め、成果の社会実装を行うために、大学のみならず企業も含めた大規模な産学官連携による研究開発に取り組んでいる。特に、人工知能(AI)研究開発においては、NICT内の知能科学融合研究開発推進センター(AIS)と連携し、脳情報解析から得られる様々な成果を社会に生かしていく取組を進めるとともに、脳に学んだ未来のAIの研究開発も進めている。■主な記事国際会議・シンポジウムの主催、産学官連携と国際化の推進1.第10回CiNetシンポジウムの開催令和2年11月9日(月)、グランフロント大阪 ナレッジキャピタル コングレコンベンションセンターにおいて、脳情報通信融合研究センター(CiNet)(大阪大学、ATR)主催による第10回CiNetシンポジウム「第10回 CiNetシンポジウム~脳サイバーインタフェースの拓く未来~」が開催された(図1、2)。新型コロナウイルス感染対策のため参加人数を通常の半分程度(124席)に絞った上で、YouTubeによるライブ配信も行うハイブリッド形式での開催となった。会場での参加者は42名(事前登録数54名、当日参加3名)、オンラインでの参加者は300名(事前登録数296名)であった。最初にNTTデータ経営研究所の茨木拓也氏が講演された。フランシス・ベーコンの4つのイドラ(人間に付きまとう偏見や誤解)について触れ、イドラを超えた脳情報に基づくマーケティング手法の開発などについてお話しされた。研究紹介では、大阪大学情報科学研究科の 図2 第10回CiNetシンポジウム特別講演(NTTデータ経営研究所 茨木 拓也氏)図1 第10回CiNetシンポジウム開会挨拶(CiNet 柳田研究センター長)3.5脳情報通信融合研究センター研究センター長 柳田 敏雄
元のページ ../index.html#62