553創つくる●データ利活用基盤分野荒川伸一氏がポストコロナの情報化社会において必要とされる没入感や臨場感を出すには、低遅延性が重要であると述べ、エッジコンピューティングの現状などについてお話された。また、大阪大学社会技術共創研究センター・センター長の岸本充生氏は、新規科学技術が社会実装される際に出現してくる倫理的・法的・社会的課題(ELSI:エルシー)について説明され、脳サイバー社会において生じ得るELSIについてお話された。同じく大阪大学の守田知代氏は、レーシングドライバー佐藤琢磨氏の脳の働き方が一般人と大きく異なることを紹介し、こうした脳の特性の違いを脳構造から評価する研究についてお話された。NICTからは春野研究マネージャーと鈴木室長が講演した。最後の招待講演では、東京大学名誉教授の廣瀬通孝氏が、VR技術の歴史を様々な事例を交えながら振り返り、コロナ禍で在宅勤務が広まっている中、今後の課題は身体感覚の伝達だとお話された。廣瀬氏は遠隔から講演した唯一の講演者だったが、一旦在宅勤務に慣れると、わざわざ大阪まで出向くのは面倒だと笑いを誘い、技術がもたらす変容は不可逆である(一旦知ってしまったら、知る前には戻れない)とお話しされた。このシンポジウムは、リアルとリモートのハイブリッドでの初の開催となった。講演者・参加者ともにリアルとリモートの両方がおり、複雑な対応となったが無事終了することができた。リアルでの開催があったことで、オンラインの視聴者にも臨場感が伝わったものと思われる。オンラインの視聴者からは忖度なしの鋭い質問が出され、質疑応答に活気をもたらした。今後、コロナ禍の中、そしてコロナ後においても、このようなハイブリッドのイベントが増えていくものと思われる。今回の経験を今後のイベントに活かしていきたい。2.産学官連携の推進CiNetの研究成果を社会に普及するとともに企業との連携の糸口を探るため、東京では応用脳科学コンソーシアム、大阪では大阪国際サイエンスクラブが主催する金曜サイエンスサロンの企画・運営に協力した。応用脳科学コンソーシアムに関しては、特定の脳科学の課題についての講義を行うコースなどに協力するだけでなく、CiNetの研究成果を紹介するコースも企画協力し、その中では9件の講演を実施し、企業からの参加者と議論を交わした。また、金曜サイエンスサロンに関しては、令和3年1月15日、22日、29日の会においてCiNetからは5件の講演(柳田研究センター長、鈴木室長、西本主任研究員、天野主任研究員、大塚研究技術員)を実施し、CiNetの研究成果についてその背景や国内外の研究状況とともに詳しく説明し、企業からの参加者と活発な議論を交わした。3.5 脳情報通信融合研究センター
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