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613創つくる●データ利活用基盤分野示した。さらには、社会実装につなげるために、ニューロフィードバックトレーニングシステムにゲーミフィケーションを導入した。ワーキングメモリの脳内基盤を解明するため、個人差とそれを引き出す脳内基盤に関して脳内ネットワーク解析を利用することで研究を進めた。実験では、まず参加者のワーキングメモリの中央実行系機能について、複合スパンテストの一つであるリーディングスパンテスト(RST)により評価した。この評価値に基づき、参加者を高得点群と低得点群の2グループに分けた。安静時8分間の脳活動をfMRIにより測定し、安静時ネットワークの3種類のネットワークと言語性ネットワークに含まれる領域について、領域間ネットワークの緊密度(connectivity)を算出した。安静時ネットワークはデフォルトモードネットワーク、ワーキングメモリネットワーク(前頭、頭頂ネットワーク)、サリエンスネットワークの3種類であった。両グループ間でネットワークの緊密性を比較し、高ワーキングメモリ得点群と低ワーキングメモリ得点群の二つのグループ間で差異が認めた。ネットワークを図2に示す。図中の左図が水平面、右図が立体表示図である。図中のカラー表示尺度は、赤色表示は高ワーキングメモリ得点群においてネットワーク緊密性がより高いことを、青色表示は低ワーキングメモリ得点群がよりネットワーク緊密性が高いことを示している。この結果から、両群はワーキングメモリ課題を実施していない安静時においても脳の領域間ネットワークの緊密度の差異が認められることを示した。特に高得点群に顕著なネットワーク緊密度が認められる前頭内側領域(MPFC)と後部頭頂領域(PPC)は、安静時における注意の制御とかかわることから、高得点群が安静時脳を維持しながらも注意制御への構えが可能であることを示すものと考えられた。今後、これらの脳内ネットワークに注目し、ワーキングメモリの向上につなげるなどの研究開発を行う予定である。非同期パルス符号多重通信方式(APCMA)は、脳内の神経細胞が活動するときに見られるスパイク状の活動からヒントを得て開発した通信プロトコルである。令和2年度においては、APCMAにおけるこれまでの4パルス符号をベースに多パルス符号へと一般化した理論モデルを構築した。図3に10,000台のデバイスについて4~7パルス符号における符号語長とスリープ期間(デューティ比の逆数)に対する誤検出率を理論モデルに基づいて算出した結果を示す。ここで誤検出率は受信、復号したメッセージ(符号)のうち実際には送信されていないものの割合であり、暗い色ほど誤検出率が低いことを表している。図に示すように符号あたりパルス数を増やすことで誤検出率を大きく低減できることを確認した。そこで、次に誤検出率を最小化する符号語集合を導出するアルゴリズムを開発し、図4に例示する2種類の5パルス符号を生成した。図は符号あたり2ビットの情報量に対応する上から順に四つの符号語についてパルスの位置(黒い四角)を示している。符号語を並べたときのパルス位置の関係に基づき、左側のようにV字状に配置されるものをAnDi(Angular Diagonal)符号、右側のように並列に配置されるものをPaDi(Parallel Diagonal)符号と称する。いずれの符号においても同一あるいは異なる符号語がずれて重なった際のパルスの重複が最小になるようにパルス位置を決定した。本符号の有効性については10~10,000台規模のネットワークを対象としたシミュレーション評価により検証済みである。理論モデルで予想する誤り訂正性能を実証実験で100台のデバイスにおいて確認することに成功した。図2 ワーキングメモリの個人差に関連する脳内ネットワークaxial view (x -y)3d displayHigh Capacity Group (HCG)>Low Capacity Group (LCG)ROI-to-ROI effects-2.852.85図3 理論モデルに基づき算出した誤検出率図4 誤検出率を最小化する5パルス符号の例AnDi(4 codewords)▮▯▮▯▯▯▯▮▯▯▯▯▯▯▮▯▮▮▯▯▮▯▯▯▯▯▮▯▯▯▮▯▯▮▮▯▯▯▮▯▯▯▯▯▮▯▮▯▯▯▮▮▯▯▯▯▮▯▯▮▯▯▮▯▯▯▯▮PaDi(4 codewords)▮▯▮▯▯▯▮▯▯▯▯▯▮▯▯▯▯▮▮▯▯▮▯▯▯▯▯▮▯▯▯▮▯▯▯▮▮▯▯▯▮▯▯▯▯▯▯▮▯▯▮▯▯▮▮▯▯▯▯▮▯▯▮▯▯▯▯▯▯▮▯▮3.5 脳情報通信融合研究センター

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