72■概要IoT機器等の脆弱性を利用したグローバルなサイバー攻撃は年々増加しており、また、企業や公的機関を狙う標的型攻撃も猛威をふるっている。他方、社会的課題を解決するためのビックデータの利活用が進むにつれ、その安全性を担保する技術の重要性も高まっている。サイバーセキュリティ研究所ではこれらの社会課題に対処するための、最先端かつ実践的サイバーセキュリティ技術や、社会の安心・安全を理論面から支える暗号技術の研究開発を進めている。1.サイバーセキュリティ技術政府機関、地方公共団体、学術機関、企業、重要インフラ等におけるサイバー攻撃対処能力の向上を目指し、最先端の攻撃観測技術や分析技術等を研究開発する。また、サイバー攻撃に関連する情報を大規模に集約し、横断的分析や対策自動化等に向けた技術を確立し、研究開発成果の速やかな普及を目指す。2.セキュリティ検証プラットフォーム構築活用技術安全な環境下でのサイバー攻撃の再現や、新たに開発した防御技術の検証に不可欠な、セキュリティ検証プラットフォーム構築に関する技術の研究開発を行う。また、このプラットフォームを活用したサイバー演習等、セキュリティ分野の人材育成支援にも取り組む。3.暗号技術IoTの展開に伴って生じる新たな社会ニーズに対応するため、新たな機能を備えた機能性暗号技術の研究開発に取り組むほか、暗号技術の安全性評価を実施し、新たな暗号技術の普及・標準化及び安心・安全なICTシステムの維持・構築に貢献する。また、パーソナルデータの利活用を実現するためのプライバシー保護技術の研究開発や適切なプライバシー対策を技術支援する活動を推進する。■主な記事サイバーセキュリティ研究所における令和2年度の主なトピックスを以下に示す。なお、詳細については、それぞれの研究室の項を参照いただきたい。1.サイバーセキュリティ研究室の活動(1)サイバー攻撃対処能力の向上のためセキュリティ・オペレーションの自動化を目指し、機械学習とサイバーセキュリティの融合研究強化を進め、マルウェアやインシデント情報等のサイバーセキュリティ関連情報を実時間で自動分析する手法の研究開発についての論文がIEICE Transactionsに採録される等、多くのアカデミックな成果が上がった。(2)無差別型サイバー攻撃の大局的な動向を把握することを目的としたサイバー攻撃観測・分析システム図1 リニューアルしたNICTERWEBサイト(https://www.nicter.jp/)3.7サイバーセキュリティ研究所研究所長 久保田 実
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