813拓ひらく●フロンティア研究分野81ングを促進することを目的とした関西最大級の国際総合産業見本市であり、今回で20回目の開催となる。未来ICT研究所からは、イノベーション創出に向けた未来ICT研究所の取組を紹介したほか、研究トピックとしてフロンティア創造総合研究室から超伝導ホットエレクトロンボロメーターミキサ(HEBM)開発に関する最新の研究成果を展示した。新型コロナウィルスの影響が心配されたが、2日間で1万人以上が来場するなど盛況であり、情報通信研究機構の展示ブースにも多くの来場者が来訪し活発な議論や情報交換が行われた。(2)研究開発成果の実用化・社会展開のための活動・電磁波研究所との研究連携において、磁性材料を用いた独自のHEBMを開発し、2THz帯ヘテロダイン受信機の低雑音化と広IF帯域化を実現した(図3)。量子雑音限界の6倍程度である約570 K(DSB)の低雑音性能と、従来構造のHEBMと比べ約3GHz拡大した約6.9GHzの広IF帯域特性は、共に世界トップレベルであり、これらの成果を令和2年9月1日に報道発表した。今回の成果は、テラヘルツ研究連携の下、所内横断的に活用されており、今後の更なる展開が期待される。なお、この成果は国際フロンティア産業メッセ2020にて発表・展示された。また、報道発表の内容は、電波新聞(9月4日10面)電経新聞(9月7日3面)電波タイムズ(9月9日1面)等にも広く掲載された。・無線通信向けの⾼周波酸化ガリウムトランジスタの開発に関わり、酸化ガリウムトランジスタとして世界最⾼の最⼤発振周波数27GHzを達成し、これらの成果を12月16日に報道発表した。無線通信では、実⽤周波数に対して少なくとも2-3倍の最⼤発振周波数が必要とされるため、本成果は、10GHz程度までの周波数で酸化ガリウムトランジスタが利⽤可能であることを意味する。1-10GHzは、衛星放送、携帯電話、無線LANなど、現在最も広く利⽤されている周波数帯であり、この周波数帯で酸化ガリウムトランジスタが利⽤可能であることを実証したのは、世界で初めての成果となる。本成果により、無線通信応⽤に向けた酸化ガリウムトランジスタ開発が、今後、世界的に活発化すると予想されるとともに、⾼周波酸化ガリウムトランジスタ技術が、既存の⾼温、放射線にさらされる環境だけにとどまらず、宇宙、地下資源探査などの未開拓領域にも応⽤展開していくことが期待される(図4)。(3)出版・配布NICTの業務に係る情報発信の一環として、神戸市の中学校副教材に未来ICT研究所に関するセクションを執筆した。本教材は平成31年度より神戸市内の中学校において広く配布されている。3.教育・アウトリーチ活動の推進と人材教育令和2年10月15日に兵庫県立大学と「包括的研究連携推進に関する基本協定書(MOU)」を締結した。兵庫県立大学の前身、姫路工業大学と情報通信研究機構の前身、郵政省通信総合研究所との間に平成11年に締結した教育及び研究への協力協定以来、連携大学院活動や共同研究を通して、現在に至るまで情報通信技術分野における研究開発について連携を推進してきたが、一層の連携強化を図るべく、包括協定締結に至ったものである。双方の拠点をリモート接続して開催された締結式では、事前に一方の署名を入れ交わされた協定書に、兵庫県立大学太田勲学長、NICT徳田英幸理事長の当日の署名によって締結がなされた(図5)。本締結を機に、連携体制をより一層強化するために、研究交流会開催やクロスアポイントメントなどでの研究者間の人材交流の推進を検討していく。未来ICT研究所ではこのような活動を通じて、人に優しい豊かな社会創造のため、長年培ったゆるぎない基盤を育みながら、社会のニーズや時代の変化にも柔軟に対応できる、発展的な基礎研究体制の強化を進め、ICTイノベーションの創出に引き続き貢献していく。図3 試作したHEBMの構造模式図及び素子上面から撮影した電子顕微鏡像図4酸化ガリウム無線通信デバイスの応用が期待される主な分野(左図)及び開発した高周波酸化ガリウムトランジスタの光学顕微鏡像(右図)図5 兵庫県立大学 太田勲学長NICT 徳田理事長3.8 未来ICT研究所3.8 未来ICT研究所
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