82■概要当研究室は、革新的ICT研究開発を進める未来ICT研究所の中でも、既存技術の延長線上に無い新たな技術の種を創出し芽吹かせるため、最先端融合領域の基礎・基盤研究を、幅広い研究分野にわたり総合的に実施している。その中で、1.通信速度や消費電力、感度等に係る課題に対してブレークスルーとなるデバイスの創出を研究開発する「高機能ICTデバイス技術」、2.ミリ波及びテラヘルツ波を利用した100Gbps級の無線通信システムを実現するための技術を研究開発し、未踏周波数領域の開拓に貢献する「超高周波・テラヘルツ基盤技術」、3.生物の感覚受容システムを利用したセンシングシステム、生体特に細胞や神経における情報伝達・処理を模倣したシステム及び生体材料が示す応答を計測・取得するシステムに関する技術を研究開発する「バイオICT基盤技術」の3分野を中心に、量子ICT基礎研究分野を加え、それらの派生・融合分野の研究プロジェクト(PJ)を設け研究を進めている。令和2年度は、第4期中長期計画の最終年度にあたり、各研究分野において計画目標を達成する重要な成果が出ている。本分野の研究は、実験、連携、実証などを中心に研究を進める関係から、本年度はコロナ渦の影響も大きいものがあったが、各分野の目標、特徴を見極めつつ、若干の遅れなどもあったが、その目標を達成した。また、計画目標から派生した研究や、融合分野での研究成果も見られ、本研究室の特徴でもある、多様な成果が出ている。次期中期計画を見据えた新たな研究PJの立ち上げ、内外の研究PJや企業との連携も進展している。これら詳細、特に融合研究分野、内外の共同研究等については、それぞれの研究所、連携研究先などの報告を参照いただきたい。■令和2年度の成果1.高機能ICTデバイス技術高速・大容量・低消費電力の光通信システム等を実現するため、原子・分子レベルでの材料・構造制御や機能融合等を利用したICTデバイスの新機能や高機能化を実現する技術の研究開発を進めている。次世代無線通信の実現に向けた広帯域THz検出デバイスの開発では、EOポリマー膜の汎用的転写プロセス技術を世界で初めて開発し、グラウンド電極を有するEOポリマー導波路THz検出器を試作、100 GHz電磁波による直接変調を実証(図1)、Beyond 5G / 6Gへ向けたToF(THz over Fiber)技術基盤を確立した。外部との連携研究を進めた研究では、Si/有機ポリマーハイブリッド超高速変調器の実用化技術において酸素透過度を3桁減少する被膜技術を確認したほか、Siディテクタが利用可能な短波長帯の光フェーズドアレイの動作実証などに大きな成果が見られた。その他、EOポリマーを用いたレーザー核融合過程の高時間分解計測を実証するなど、基礎基盤研究の広範な応用展開も実施した。超伝導単一光子検出器(SSPD)の広範な応用展開を目指した研究開発では、850 nm帯SSPDにおいて1カウント/秒以下の暗係数率で90%を超える検出効率を達成し図1 汎用的EOポリマー膜の転写プロセスと100 GHz帯EOポリマー導波路型THz検出器の試作(2)転写技術を用いた導波路型THz検出器(1)汎用的転写プロセス技術と転写膜構造断断面面図図EOポポリリママーー光光導導波波路路10 mm100 GHz帯電磁波金金アアンンテテナナアアレレイイレーザー光光変調信号EEググララウウンンドド電電極極Si基板など様々な材料基板上へEOポリマーを転写する汎用的プロセス技術を開発熱熱ププレレスス転転写写SiEEOOポポリリママーー100℃℃3.8.1フロンティア創造総合研究室室長(兼務) 久保田 徹ほか82名最先端研究の融合による新たな情報通信パラダイムの創出を目指す
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